『ユークリッド幾何』(山びこ通信2012/2より)

『ユークリッド幾何』 (担当:福西亮馬)

「先生、ピタゴラス数って何ですか?」と質問してくれたのは、H君でした。以前、平方根の計算についても同じくH君から質問がありましたが、その延長線上で、三平方の定理とのかかわりで出てきたのだと思います。

ピタゴラス数とは、x2+y2=z2が成り立つような、(x,y,z)の組み合わせのことです。たとえば(3,4,5)や(5,12,13)がそれにあたります。「では、そうした組み合わせは無限にありますか?」というのが、H君の次の質問でした。そのような関心を示してくれたので、それについて考察したものが、以下の記事です。(ただしこの日の参加者のみとなります) 

H君の考察

隣り合う(自然数の)二乗の数の差に注目します。するとそれは2ずつ増える奇数であることが分かります。その中に出てくる(自然数の)二乗の数を調べると、まず9=3×3が見つかります。すなわち、3×3は、5×5と4×4の差を埋める数だと分かります。よって、(3,4,5)が一つ目のピタゴラス数です。

  n  1  2  3  4 5  6  7  8 9 10  11  12 13  14 15
二乗の数 1  4  9 16 25 36 49 64 81 100 121 144 169 196 225  (256)
  差   3  5  7  9 11  13  15  17 19  21  23 25  27  29  31
  n  16  17  18  19 20  21 22  23  24 25  26 27  28  29 30
二乗の数 256 289 324 361 400 441 484 529 576 625 676 729 784 841 900
  差      33   35   37  39   41  43    45    47   49  51  53   55  57   59

(注:表中の数字がずれて見にくくてすみません。三段目は2段目の前後の数の差になります)

次に差の中で二乗の数になるのは25です。これは13×13と12×12の差を埋める数です。よって(5,12,13)もピタゴラス数です。他にも、(x,y,z)のxを7、9、11、13、15…と変えていくと、(7,24,25)、(9,40,41)、(13,84,85)、(15,112,113)…と見つかっていきます。 上のリストに無い大きな数では、次のように調べました。差の並びをn番目まで数えると、その値は2n+1です。すなわち2n+1=x2です。x2を差に持つ、隣り合う二乗の数は、y2=n2、z2=(n+1)2です。2n+1=x2を解けば、y、zも求まります。たとえばx=15だと、2n+1=225(=152)を解いて、n=112。よって、y=112、z=113と求まります。 よって、ピタゴラス数は(√(2n+1),n,n+1)と表され、nを増やすことで無限にあることが分かりました。

H君はまず、自然数を二乗して、一つずつ書き並べていきました。そして早速、その差が3、5、7、9…と奇数であることに気が付きました。その着眼点が大変素晴らしいと思いました。(3,4,5)、(5,12,13)が既知だったことから、12と13の差が1であることがヒントになったようです。

一方K君もまた、(3,4,5)、(5,12,13)から出発して、帰納的にピタゴラス数を発見する過程で法則性を見出しています。zの増え方が+8、+12、+16、+20…であるという数字の並び具合に、さらにその差(階差)に注目したのがひらめきでした。また奇偶性にもメスを入れているのが特筆すべき点です。

K君の考察

(x, y, z)=(3, 4, 5)、(5,12,13)は知っていたので、ここから出発して考えた。 まず、xが3→5になっていることから、xが2ずつ増えるのではないかと予想した。そこでx=7として探すと、(7,24,25)が見つかった。 するとzは5→13→25となっており、5→13には8増え、13→25には12増えている。次は16増えるのではないかと予想した。すなわちz=41、x=9。またyはzと1違いなので、y=40。実際に計算してみると、92+402=81+1600=1681。412=1681。よって(9,40,41)もまたピタゴラス数である。

3, 4, 5

5,12,13

7,24,25

9,40,41

(左の列は+2ずつ、右の列は+8、+12、+16…となっており、階差で+4ずつ)

上のことから、xは2ずつ増え、zは増え方が4ずつ増えるという法則が見つかった。この法則を使って順次、(13,84,85)、(15,112,113)…と見つけていくことができる。 ちなみにxは3から始まって+2ずつ増えているので、奇数+偶数=奇数である。また、zは5から始まって+8、+12、+16、+20…と増えているので、奇数+偶数=奇数である。yはz-1なので、奇数-奇数=偶数である。 よって、ピタゴラス数は2つの奇数と1つの偶数からなることが分かる。

これは高校の範囲になりますが、数列の計算を習えば、zは、Σ(4n)+1=4・n(n+1)/2+1=2n(n1)1と表すことができます。これはすなわち奇数です。またy=z-1=2n(n+1)は偶数であり、x=2n+1は奇数。確かにK君の分析通りとなっています。よって、K君はあともう一歩踏み込めば、ピタゴラス数の解析的な表示を見出すことができると期待しています。

またこの後に、「数学オリンピック」について質問がありました。そこで最近は、JJMO(ジュニア日本数学オリンピック)の過去問の中から幾何の問題を選んで解いています。だいたい1回の授業で1~2問を解く調子です。大人でも解けるとすごく嬉しくなるような良問ばかりで、また機会があればご紹介したいと思います。

(福西亮馬)