『化学』(山びこ通信2010.6より)

『化学』 (担当:上尾真道)

現在化学の授業では、高校3年生のS君とマンツーマンで、高校の授業進度に合わせて「芳香族有機化合物」について勉強しています。

有機化合物の範囲の勉強で重要なことのひとつは、各種の誘導体についてきっちりと押さえておくことです。つまり、或る化合物を反応させることで、どういった別の化合物が生まれてくるのか、といった流れをきっちりと理解することが大事です。これについてはある程度、機械的に図を覚えてしまうというやり方もありますが、なるべくならば、酸化・還元などの化学的原理についても復習しながら、本質的な理解に努めておくことが、後々のためにも有効であろうと思います。

とりわけ有機化合物の領野では、原子のそれぞれの形をある程度頭に描いてやっていくとわかりやすくなる部分があります。授業では、各原子はいくつかの腕を持っていると説明しています。これは実際には、最外殻にある電子の数と関係しています。たとえば有機化合物の領野でもっともよく出現する原子C(炭素)の場合、外側に保有する電子は、4つですので、腕が4本あります。対してO(酸素)は、外側に6つの電子を持っています。ところがこの場合、腕が6本あるとは考えません。Oの最外殻には全部で8個の電子を詰めることができるので、Oはあと2つほど電子を受け入れる余裕があるということになります。というわけでOの腕は2本というわけです。このように、原子のそれぞれの形と特性を理解しながら、有機化合物の構造式を描いていくことで、全体の着実な理解を獲得していくことができるのです。

また有機化合物の分野では、どんどんと暮らしに身近なものが現れてきます。火薬や、芳香剤、染料など、化学が実際に生活の中で役に立っていることがわかってきます。こうした側面から、それぞれの誘導体への関心を高めることもまた、有機化合物の分野に精通していくために重要だろうと思います。

(上尾真道)