『物理』(山びこ通信2010.6より)

『物理』 (担当:上尾真道)

高校3年生の春学期の物理の授業では、学校の進度に合わせて、運動量、力積、円運動などについて解説を行っています。物理と聞くと、理系科目なので複雑な計算力などが必要と思われるかもしれませんが、むしろ哲学に近いところがあり、概念や次元などについて適切に押さえておく論理的思考力が必要です。ですから、こうした段階でじっくり考えることを省略することは、物理学的な思考の土台をおろそかにすることとなります。

そのため授業では、例えば“運動量”や“力積”といった概念について、まずは、これがどういう事柄を表そうとしているのかをじっくり考えることから始めます。物が動くということは、物の速度が増えた、つまり加速したということであり、したがって力(力の定義は、ある質量の物に加速度を与えるということです)が働いたということです。車で言えば、アクセルを踏んでいる状態です。アクセルを踏み続けると速度は増しますから、どのくらいの間踏んでいたかによって車の速度は決まります。などなど、ひとつひとつの概念を丁寧に踏まえながら一からこうした説明を行っていくことで、抽象的な概念の理解へとたどりつくことように努めています。この手続きは、概念に対応する単位をきちんと理解するためにも必要なものとなります。

さらに授業では、たびたび、概念の意味について言葉で噛み砕いて生徒に答えてもらっています。例えば円運動に“角速度”や“周期”という概念があります。これもぱっと聞いただけでは抽象的なままで、つかみどころがありませんが、それぞれ「一秒で何rad(角度の単位)動くか」、「一周するのに何秒かかるか」と、言葉にして理解しておけば、ややこしい公式をたくさん覚えずとも、同じことが直観的に分かるようになります。実際、角速度と周期の関係を考えようとする際、例えば「一秒でπrad(180度)動く」角速度なのであれば、一周する(2π=360度)ためには2秒かかることはすぐわかります。物理において重要なのは、まずこうした論理的な思考の積み重ねです。代数や公式は、それを上手く使えるようになれば、効率的になるということに過ぎません。とにかくまずは、こうした論理のレベルでひとつひとつを着実に理解していくことが授業の目標です。

(上尾真道)