高校・日本語の読み書き(山びこ通信2011.2より)

『高校・日本語の読み書き』 (担当:和田 浩)

このクラスは、高校2年生のNさんとの1対1の個別クラスです。Nさんの目標とするセンター試験を見据えて、ともに文章を読み、問題を解き、議論を重ねています。これまでのところ、現代文とりわけ評論を中心に対策を行なっています。

センター試験の評論の問題は、文章全体の構造さえ掴むことができれば、ひとまず多くの問題に正答することができます。ですので、Nさんには、全体の構造を意識しながら読む習慣を付けてもらいたいと考えています。そのため、私たちの議論はいつも、まずNさんに、読んだ文章について簡潔にその構造を説明してもらうことから始まります。その後に、私があらためて問題文の論理構造を析出しますが、その際には、できる限り問題文の背後にある知の構造についても説明するように心がけております。

また、センター試験は選択式の問題であるため、解答には必ず根拠があるはずです。そこで、Nさんには、ある肢を選択し、他の肢を選択しなかった根拠を、必ず説明してもらうようにしています。その上で、私がそれに対して同調や反駁をし、最終的に結論を提示するようにしています。

Nさんは、この講座を受講するまでセンター試験の問題に触れる機会がなかったようで、開講当初は問題文を読解することに四苦八苦しているようでした。しかし、多くの文章を読むうちに、評論文には論理構造が存在するということが、感覚的に理解できてきたようです。そして、その構造を読み解くコツも、掴みつつあるように思います。また、解答にあたっても、Nさんは根拠をもって肢を選ぶ習慣ができつつあります。

先日、Nさんは、学校で今年度のセンター試験の問題を解いてみたそうです。その結果、現代文については申し分ない点数がとれたそうです。ともに文章を読み、議論を重ねた成果が出ているのだとすれば、なんとも嬉しい限りです。そして、Nさんの飲み込みの早さに、脱帽です。

こうして、ことばのクラスでは、主としてセンター試験の対策を行なっておりますが、長い目でみると、Nさんにとっては、ことばを通じてみずから表現する力を養うことも有意義だと考えています。そこで、時にはNさんの進路に直結するような内容の文章を読んでもらい、小論文を書いてもらうこともあります。また、今後は読んだ本や観た映画、その他、感動した事柄等について、ことばを通じて表現してもらう時間ももうけてみたいと考えています。

そうした作業を通じて、Nさんが、ことばのもつ魅力やことばに潜在する可能性を感じ取ってくれることを、願っています。

(和田 浩)