『ラテン語中級講読』──山びこ通信より(2006.2)

『ラテン語中級講読A』(担当:山下太郎)

このクラスではキケローの『老年について』を読んでいます。

まもなく最後まで読み切ることができそうです。ここまで来るのにまる二年かかりました。参加者の真摯な取り組みにはいつも脱帽です。昨日の授業を終えたとき、しみじみと「これは原文で読まないと面白くないですねぇ」とのお声をいただき、私も大きく頷きました。タイトルだけ見ると、老人向けの作品のようですが、内容を読むにつれ、この作品は人生の大海に船出する若い人向けの必読書だと痛切に感じます。私自身「死を思って生きる」ことの意味を深く考えるようになりました。4月からは参加者一同の希望で、キケローの学問論、文化論満載の『アルキアース弁護』を読む予定です。

(山下太郎)

『ラテン語中級講読B』(担当:山下太郎)

このクラスでは長らくセネカの『幸福な人生について』を読んできましたが、内容的に一段落したので、今は、ウェルギリウスの『牧歌』を読んでいます。

これは、全部で10の作品から成るバラエティ豊かな詩集です。各々の詩で扱うテーマは今も斬新に感じられ、とうてい二千年前の作品とは思えません。音楽にせよ絵画にせよ、ヨーロッパの芸術には、田園生活に憧れを持ち、それを賛美する伝統がありますが、その美意識の基礎を作ったのがこのウェルギリウスです。私自身、文法の解釈が正確にできても、一語のもつ意味の広がりが多様に重なり合うため、散文のようにすいすい理解が進みませんが、古典語の読解ですので、スピードを競う必要はどこにもありません。

(山下太郎)