『経済学入門』(クラスだより2011.2)

山びこ通信(2011/2月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)『経済学入門』(担当:百木 漠)

「経済学入門」は9月から新しく始まった大人向けクラスです。「経済学入門」というと難しく聞こえますが、この授業ではいわゆるマクロ・ミクロ経済学の内容を教えるというよりも、日々の経済ニュースを分かりやすく解説していければ、と考えています。イメージとしては、最近テレビで人気の池上彰さんが行っているニュース解説を、経済的なトピックスに特化してやってみよう、という趣旨です。もちろん池上さんのような流暢な解説は僕にはできないのですが、少人数(マンツーマン)という形態を生かして、生徒の方と対話をしながら、柔軟に経済ニュースの解説を行っていければ良いなと考えています。

今のところはUさんとのマンツーマン授業ですが、保護者の方や他の先生方でも、もし関心ある方がいらっしゃれば、お気軽に参加していただければ幸いです。経済学の前提知識などはまったく必要ないのでご心配なく。

第一回目の授業では、最近話題の「円高と為替介入」を取り上げました。最近の経済ニュースでは円高が話題になることが多いですね。9月15日には政府・日銀が6年半ぶりに為替介入を行ったというニュースがありました。為替介入の効果では一時的に円高が是正され1ドル=85円にまで戻ったのですが、これを書いている10月17日時点では1ドル=81円まで円高が進み、さらに政府・日銀が為替介入を行うかどうかが話題になっています。

そこで第一回目の授業では、「政府はなぜ為替介入したのか?為替介入ってどうやって行うのか?そもそもなぜ最近これだけ円高が進行しているのか?」といったテーマを扱いました。為替を考えるときに、経済学で最も基本になるのは「購買力平価説」という理論です。これは、長期的な為替レートは両国通貨の購買力(または物価)に比例して決まるという理論です。というと難しく聞こえますが、簡単にいえば、アメリカで1個1ドルでハンバーガーを売っていて、日本では1個100円でハンバーガーを売っていたとすると、為替レートは1ドル=100円に決まる、ということです。

この理論で考えると、日本では近年ずっとデフレ(物価が継続して下落すること)が続いているので、実はアメリカドルに比べて日本円の価値が高くなるのは、経済学的には必然の出来事なのです。最近はFRB(アメリカの中央銀行)が大規模な金融緩和を行ったことでいっそう円高が進みました(アメリカで金融緩和→アメリカのマネーサプライが増える→ドルの価値が落ちる→円の価値が上がる)。同時期に日本も金融緩和策を実施したのですが(実質のゼロ金利復活というニュースがありましたね)、アメリカの金融緩和の規模には遠く及ばず、まだまだ円高は続きそうです。この調子でいけば、1ドル70円台に突入するのも時間の問題ではないでしょうか。

まだ授業が始まったばかりで、授業の進め方も手探り状態ではありますが、できるだけUさんとのたくさん会話するかたちで、経済ニュースを理解する面白さを伝えていければと考えています。

(百木 漠)