山びこ通信(2012/2月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)『経済学入門』(担当:百木 漠)

経済学入門は、相変わらずUさん、Koさん、Iさんの三人の生徒さんでわいわいと議論をしながら盛り上がっています。秋学期は佐伯啓思『大転換』を皆で輪読しました。今学期の前半は、毎回私(百木)が経済に関するテキストやニュースを選んできて、それを事前に読んできてもらい、授業の時間に私が簡単な解説をして、それについて皆でディスカッションするという形をとっています。

例えば、12月にはケインズの「孫たちの世代の経済的可能性」というエッセイを読んでもらって、成熟社会のあり方について議論しました。このエッセイは1930年に書かれたものですが、見事に現代経済の問題点の本質を言い当てています。ケインズは、その当時から見て100年もたてば世界の経済的な問題はほとんど解決し、その後にやってくる「退屈」こそが人類にとっての真の問題となるだろうという趣旨のことを書いています。この予言はある意味では外れ、ある意味では当たっていると言えます(確かに数字上で見れば先進国の物質水準は過剰なほどに高くなっているが、しかし貧困や格差などの問題はまだまだ残っている)。なぜこれほど生産水準が高くなっているにもかかわらず、我々がいまだに経済問題に苦しめられているのか、また将来にやってくる「退屈」の問題をいかに乗り越えればいいのか、という論点は今でも大いに考える価値があるものです。実際に授業内での議論も大変盛り上がりました。受講者の方々は、なかなかケインズの文章などを読む機会がないので、良い経験になったと喜んでくださっていました。

また、竹中平蔵さんと山口二郎さんが対談した雑誌記事を読んで、どちらの言い分に理があるのかについて議論したりもしました。竹中平蔵さんがいわゆる「小さな政府」派(規制緩和、構造改革を支持)、山口二郎さんがいわゆる「大きな政府」派(福祉政策、再分配を重視)の学者さんですが、この対談では両者の意見が真っ向からぶつかって、とても読み応えのあるものとなっていました。この授業では、山口さんの意見のほうにやや支持が集まった(というよりは竹中さんへの批判の意見が強かった)ように思いますが、部分的な政策提案については、竹中さんの言い分に理があるところもありました。具体的には、構造改革・規制緩和によってグローバル化を推進し、日本経済を強くすることを目指すのか(竹中路線)、必要な増税はきちんと行ったうえで、社会保障を手厚くし、格差のない社会を目指していくのか(山口路線)といった方針の違いです。この日のディスカッションも興味深い指摘がたくさんなされ、大変盛り上がりました。

冬学期の後半では、原丈二『21世紀の国富論』を輪読していく予定です。原さんは、ビジネスの最前線で活躍されているベンチャーキャピタリストですが、正統派の経済学とは少し違った観点から「公益資本主義」という経済モデルを提唱しておられて、なかなか興味深いです。ぜひ今後も、皆で議論を盛り上げつつ、経済学入門の授業を続けていきたいと考えています。

(百木 漠)

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