中学英語クラスの取り組みです。(『山びこ通信』2004.12月号より転載)

 

『伝統的英語学習法のめざすもの』(山下太郎)

私は今、「山の学校」で中2の英語クラスを担当しています。クラスを受け持ったとき、限られた時間の中で英語の何をどう伝えるか、思案しました。英語を教える切り口にはいろいろありますが、普段の試験対策につながるだけの場当たり的な勉強ではなく、高校に入ってからも、将来社会に出てからも役に立つような勉強を中心に進めていきたいと思いました。

ここで、中学で学ぶ英語についてふれてみます(あくまでも一般論としてお読み下さい)。今の教科書はその内容をだいぶ削っているとはいえ、英文法の基本を段階的に伝えようという意図は昔も今も変わりません。基本的な例文は200あるかないかです。扱う例文の難易度は語彙のバラエティで調整することになります。

たとえば、I love you. (私はあなたが好きです)も I admire you. (私はあなたを偉いと思う)も同じ例文に数えることができますが、語彙の点では love よりも admire のほうが難しいとみなされます。そして、この手の「難しい」例文はいくらでも用意することができます。

この「難しい」例文に接するのが高校に入ってからの勉強であり、逆に言えば、今の中学の英語は極端に語彙を制限していますので、生徒たちが目先の語彙の多様性に目を奪われる心配はないということになります。しかし、これに油断して中学時代にまるで辞書を引かなくなると、高校に入ってから洪水のような語彙を前にして途方に暮れることになります。

こうならないためにも、中学時代から辞書はしっかり引くべきなのですが、教師としては単に辞書を引きなさいと指示するだけではダメです。一つ一つの言葉について、辞書を引きたくて仕方がない気持ちに導くのが大切です。その鍵となるのが、(今の中学で習得するはずの)文法の力ということになります。

たとえば、中学英語で学ぶ

(1) He studies at school.

(彼は学校で勉強する)

は一見簡単に見えますが、school の前に at がついている点が重要です。逆に、

(2) He studies English.

(彼は英語を勉強する)

の例文に前置詞はありません。前置詞の有無、言い換えれば文例パターンの識別能力が、英文法の力として常に問われるのです。

この力が本物なら、高校生が

(3) I can’t stand it.

について「私はその中で立ち上がれない」とか、

(4) He runs a small restaurant.

について「彼は小さいレストランの中で走っている」などの誤訳は絶対にしません。かりに、stand=我慢する、run=経営する、という知識そのものはなくても、「it の前に前置詞がない。あれっ何か変だぞ?」という感覚が働くはずであり、その感覚に導かれてすっと辞書に手が伸びるでしょう。逆に言えば、この感覚(日本語の感覚でもある)こそ、英文法の学習によって自然に磨かれるものだということです(ちなみに先に挙げた (1) はSV、(2)はSVOの文型で、今ご紹介した (3) と(4)は、ともに(2)と同様、SVOの構文です)。

さて、本題に戻って私が今担当しているクラスの現状をお伝えします。クラスでは教材として市販の学年別問題集を使っています。学校の学習レベルより少し難易度の高い単語や構文も適度にちりばめられているので、辞書を引くタイミングには事欠きません。

1学期の間は、2年生の問題集と並行して1年生の問題集も使いました。1年生の学習はスイスイはかどりましたが、いつも完璧にできるわけではありません。間違ったら、その都度丁寧に辞書を引いていきます。10問中5つや6つも間違う問題集だとやる気を失いますが、中1レベルだと誰もが10のうち1つか2つ程度の間違いですみます(逆にそのレベルの問題集を選ぶべきです)。つまり、余裕を持って個々の間違いとつきあうことができます。

一方、2年生で学ぶ内容は、1年生の学習が前提になっているため、1年生の復習が終わるころには、生徒たちの正解率も俄然上がってきました(凡ミスが激減したということです)。また、文法的な未習事項や未知の単語に対しても、自分たちで辞書を引くことによって、どうすれば正解を得ることができるか、そのノウハウも徐々に身につけてきたようです。

実は、このノウハウの習得こそ、私がもっとも重視している英語学習のポイントであり、この問題解決能力そのものは英語以外の教科の勉強にも応用が利くのだ、ということを最後に強調しておきたいと思います。

(山下太郎)

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