ワクワクしぜん教室(2004.9の記録)

夏休みに開催した「ワクワクしぜん教室」の記録です。

「山びこ通信」(2004年9月刊行)からの記事です。(以下転載)

『ワクワクしぜん教室』 しぜんクラス主催

日 時  2004年8月24日(火)

行き先  比叡平~池の谷薬草園~大文字山三角点(△466)~送り火火床~銀閣寺

幼稚園のふもとに8時50分。集合のあと、みんなで最寄りの別当町バス停から、ひとまず大津市比叡平行の京阪バスに乗り込み、終点をめざし出発です。比叡平は市内より高台にあるだけに、バスを下車したときはとても涼しく、まるで信州にきたかのように爽やかな気候でした。

10分ほど歩き、北山杉が林立する道を通過して、如意ケ嶽にある「池の谷地蔵尊」の境内に薬草園はありました。6000坪に600種類の薬樹,薬草,ハープのコーナーがあり、お地蔵さんを守っておられる尼さんが快く迎えてくださいました。そして、周辺を先導しつつ、さまざまな薬草を観察しながら説明をしていただきました。

驚いたことは、「キョウチクトウ」や「トリカブト」「ムラサキケマン」など、一般的に毒があるとされる木や草が薬草であったということです。お尋ねをすると、なるほど、「処方する量によって、薬にもなりますよ。」と言うことでした。また、私たちのごく身近にある「ハコベ」「オオバコ」なども薬草となるそうです。結局、自然植物は大方が薬草になり得るということでしょう。

ビールの原料になるホップなどを見ながら、敷地内の谷へ下りていき、水の流れのある湿地には、“ワサビ”がたくさんできていました。園内のスタート地点に戻り、皆でお礼を言って薬草園をあとにしました。

約30分ほどで、大文字三角点の頂上466mに到着しました。そこは平坦な場所で、南側に景気が開け、山科方面が眺められます。そこで、お弁当を広げることに決定!

食後、しばらく休憩をしている時、銀閣寺方面から来た方が近づいてこられ、『今、あっちに不思議なものがありましたよ?』と教えて下さったので、急いでかけつけてみると、白く粉をふいたような小さなモノが、宙をフワフワと浮いているのが見えました。

「あれ、一体なんやろ?」

と、暫くみんなで首をかしげながら見つめていると、どうやらそれは、木の上の方から、目に見えないくらいの糸状のものにぶら下がって、フワフワと風もないのにゆらめいているようでした。その『不思議な生き物』は、後でSちゃんのお母さまが調べて下さり、『セミヤドリガ』の終齢幼虫であることがわかりました。幼虫は、主にヒグラシに寄生して成長し、終齢幼虫になってしばらくするとセミから離れ、口から吐く糸でまゆをつくってさなぎになる準備をするそうです。結局、木の枝にくっついていたところが、まゆの糸が長く伸びて、高い木の上から糸の先にぶら下がって揺れ動いていたのだと想像できました。

最後に、用意していた登頂記念プレートに全員で名前と絵を書き込み、りょうま先生に高い木の枝にくくりつけてもらいました。記念写真を撮影した後、大の字の方面に向かって再スタートです。途中、雑木林の片隅でたくさんの“きのこ”に出会いました。

「こんなきのこがあったぁー!」

と、子どもたちは見つけるのがとても上手です。きのこ探しをしながら歩くとキリがないほどで、いろんな形,いろんな色,毒きのこではないかな?など、名前を知りたくなります。きのこハンドブックで、「きっと、これだね。」というものがいくつかありました。結局、Mちゃんが見つけたのは“オオホウライタケ”、Yくんのは“サクラシメジ”、Kくんは“ドクヤマドリ”などと見つかりました。

そうこうしながら林を抜け出ると、途端に視界が開け、いよいよ京都の街や周囲の山々が一望できる場所に出ました。「すごい見晴らし!」「あーよかったー」と、一歩一歩自分の足をたよりに歩いてきたごほうびのパノラマ風景が目の前にありました。

「あれが御所やね」、「吉田山かな」、「幼稚園の方が見えるね」。普段は滅多に見られない高い場所からの景色を堪能しながら、また下りていきました。

途中、Kくんは、これまた珍しく、柄がなく、直接木から傘が何枚も生えている、びっくりするような赤い色をした、きのこを発見しました。本で見ても「マンネンタケ」や「カンゾウタケ」のようでもなくて、名前が結局不明です。

その後、「千人塚」では、きれいな石を見つけたり、どんどん下山していく途中、風化した花崗岩の岩肌がむき出しになった所とその下に溜まった白川砂を観察しました。「花崗岩の中の石英はガラスの材料になるよ、」とKくん。

麓では、1億年以上も前にできたチャート地層を、銀閣寺境内入り口の石畳では、むかし、マグマが入ってきたときの熱で焼かれてできた泥岩のきん青石ホルンフェルスを観察し、銀閣寺をあとにして解散場所へと向かいました。

大文字山には、山科方面、蹴上方面、鹿ケ谷方面へ下りる等のさまざまな登山コースがあり、植物,昆虫,石を観察しながらハイキングができるとても身近な場所です。今回の「しぜん教室」は、約5時間の行程でしたが、何より天候に恵まれて、自然の中を歩く楽しみを大勢で共有できたことを大変嬉しく思います。

(山下育子)

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