9/15 ことば3年

こんにちは、上尾です。
今週のことばの授業では、まず最初に先週の授業で
書いてもらった詩についてそれぞれ発表してもらいました。

前回のクラスでは、擬音語・擬態語というテーマで詩を書いてもらっていました。先週のうちに書き上げた子もいましたが、宿題として持ち帰った子もいます。持ち帰った子の中には、まだできあがっていない子もいましたが、とりあえずということで、途中まででも発表してもらうことにしました。

N君は「音」というテーマで、身近にある様々なものの音を擬音語で表現してくれました。例えば「草はシー」など、普段見慣れているけれども、敢えて耳をそばだててみることのないような物事に、新しい装いを与えています。

T君は、「ジリジリ」という擬音語に着目して「太陽」と「目覚まし時計」を対比する詩を作ってくれました。二つの無関係な事物を、ひとつの擬音語を通じて出会わせるというのは機知がきいています。

Y君の詩「らんぼうバイオリン」では、擬人化されたバイオリンが嫌な音を立てる様が描かれています。耳を塞ぎたくなるような不味いバイオリンの音も「ギィーガリーバリバリグキィー」と書くと途端にユーモラスになりますね。

H君の作品「犬」は、ちょうど前回の中也の詩のように、リズミカルに構成されていて、歌のように読める詩でした。

クラスは大所帯なのでここで全員分ご紹介できませんが、どの子も何かキラリと光るところのある詩を作ってくれます。

それぞれの発表の後には、2チームに分かれて、擬音語連想クイズを行いました。或るお題に対して出題チームが一人ずつ、擬音語・擬態語をいい、それを手がかりに回答チームが正解を予想するというゲームです。非常に盛り上がり時間ギリギリまで続きました。

さて、以下は、少し長くなるかもしれませんが、「ことば」の授業について私の考えているところを少々書きたいと思います。
やや極端に話を始めますが、ことばの特徴とは、そもそも「誤解」にあるのではないでしょうか。ありふれた非常に簡単な「ことば」ひとつとっても、それが本当に指している物事についての個々人の理解は、それぞれ違っているはずです。例えば「犬」ということばについても、人類の最大の友人としての動物種を思い浮かべる人もいれば、噛み付く鋭い牙のイメージとともに恐怖を感じる人も、あるいはその従順さを軽蔑すべき特徴と考える人もいます。そうした意味では、ことばによるコミュニケーションとは、何らかの情報を正確に確実に相手に渡すという点では、すこぶる不安定なものです。「あなたは犬に似ているね」といきなり言われて、喜ぶ人もいれば、怒る人もいるでしょう。
では、にもかかわらず「ことば」を使ってコミュニケーションを取るということは、一体、どのようなことなのでしょうか。或ることばを誤解するというとき、人は、自分の理解の中でそのことばを消化しています。つまり誰かが提示した「ことば」を、自分の知っていることの中に収めようとしています。コミュニケーションとは、語源に遡ると、そもそも「共通のものを作る」という意味ですが、ことばを使って「共通のものを作る」ということが私たちがすべきことであるとしたら、そのとき重要なのは、こうしたある種ひとりよがりの「理解」は一旦かっこに入れて、相手の言わんとすることのほうに関心を向けるということでしょう。これはある意味当たり前のことで、私たちみなが普段のことばの実践では多かれ少なかれ行っていることです。だからこそ日常では、文法や語彙が不十分でも意思の疎通を行うことができています。しかしまた同時に、この点を見失うことをきっかけとして、様々な行き違いが起きてもいます。
つまり、相手の言おうとすることを聞くこと。あるいは「相手」にきちんと向かい合うこと。これが「ことば」の授業の要であると私は考えています。作品鑑賞の時間、個々の作品の発表の時間、そしてディスカッションの時間、これらすべてにおいてまず、与えられたものを自分の理解の中に押し包んでしまう前に、相手のことばを真剣に聞くことが大事です。このような態度で「聞いた」うえで初めて、互いの考えの違いに改めて目をむけ、自分の意見を確認したり、あるいは自分の考えを変えたりすることができるようになるでしょう。また、自分とは違う様々な考え方があることを知るようになれば、自分に向けられたことばの解釈のいくつかの可能性にも、始めから自ずと目が向くようになります。一朝一夕に身につくことではありませんし、目下、何よりの関心が自分であるという子供たちにとってはなかなか容易でないことかもしれませんが、この点を基礎として「ことば」に関わる知性も感性も伸びていくのだと思います。これがこのクラスの最も大事な方針の一つです。
ところで、以前にも書いたように秋学期は「書くこと」を中心に進めていますが、これはまた別の方針を念頭に置いています。これについてはまた別の機会に委ねたいと思います。