ことば1年

 福西です。秋学期が始まりました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の授業は、「これ」と「それ」という言葉を使わないというルールの下で、「連想ゲーム」を楽しみました。(今『オズの魔法使い』を読んでいる影響で、ちょっとしたストーリー仕立てにしてみました。)

連想ゲーム

 今日、あなたたちが教室のドアをあけると、目の前に突然薄暗い森が広がっていました。そこは、「これ」と「あれ」という二つのことばを『言ってはならない』世界でした。うしろのドアは、いつの間にか消えてなくなっていました。
 しかたなく、あなたたちは、森の中をさまよい歩いていると、まわりの木がどれも人の顔に見えてきました。あまりのこわさにあなたたちがしゃがみこんでしまおうとした、そのとき、ふと目の前に、一けんの小屋のあかりが見えました。あなたたちは、よろこんで、小屋まで走っていきました。

「すみません。だれかいませんか?」

けれども、返事はありません。そこであなたたちはしかたなく、そっとドアをあけて、中に入ることにしました。

すると、突然、
「だれだ」
という声がして、屋根裏から黒い影が落ちてきました。なんと、そこは、『サトリ』という妖怪のすみかだったのです。

 サトリはいいました。
「わしははらがへっている。だが、それ以上に、退屈している。何かゲームをしたい。そうだな、お前たちがどれだけ仲間のことをよく知っているか、ためしてやろう。心の中で思っているものを多く言い当てた方が勝ちということにしよう。ただし、この森には、『言ってははらないことば』という決まりがあるので、注意するように。もしそれを言ってしまったら、それはわしの点数となる。それでは、ゲームスタートじゃ。」

 さて、あなたたちは、この恐ろしい小屋から無事外に出ることができるのでしょうか…?

(仮名遣いは改めました)

 ゲームは昔NHKではやった「連想ゲーム」そのままですが、ルールを簡単に説明しますと、
1)まずカードに「ひみつのことば」を書きます。
2)そして解答者の後ろにいる人がそれを持ちます。
3)一方、解答者の前にいる人がそれを見て、カードの言葉を使わないように注意しながら、解答者に「それが何か」が分かるように説明します。
4)たとえば「シマウマ」を当てるのだとしたら、「しましま模様」とか「馬の仲間」とかはNGで、「アフリカに住んでいる四本足の動物」とか「頭の髪の毛がピンピンしている」とかいうのは有効な説明になります。
5)30秒たつまではサトリ(私)は黙っていますが、その時間をすぎると、解答者と一緒に答を言いはじめます。
6)そして先に言い当てた方に1点が入ります。また「言ってはならない言葉」を言ってしまっても、そのたびに相手の点数になります。
7)さらに、ひみつのことばを「持つ人」、「説明する人」、「答える人」という3つの役割を、生徒たちの間で順番に回していき(その間も時間が経っていきます)、時間制限のある焦った状況の中で、できるだけ「正確な言葉」を使うというのが、このゲームの主旨です。

 というわけで実際にやってみると、最初ドキドキしていたようでしたが、飲み込みが早くてすぐにとけこんでいました。「説明する人」は何度ヒントを出してもいいのですが、たとえば「椅子」を言い当てる場合、「座るもの」と的確なヒントを出しており、1秒の即答もしばしば見られました。12対2でみんなの勝ちとなりました。それなので、30秒はハンデをつけすぎ、彼らの場合5秒でも十分ということが後で分かったことでした(笑)。

 逆に30秒を超えた問題では、「おさいふとかが入っている」「手で持つひもがついている」「お母さんがよく持っている、ええと、ええと…」というケースもありました。一度そうしたスパイラルに入ると、答える人の偏見を取り除かなくてはならなくなるので、より説明が難しくなり焦ってしまうのが面白かったです。

 ただ、「これ」と「それ」という言葉は一度も発することが無かったので、それは予想外に終わりました。

 さて、夏休み中に「ことば」のクラスは何をするところかということを少し考えていたのですが、意外と見落とされがちなのが「言葉を正確に使うこと」ではないかということに思い当たりました。かくいう私自身も胸に手を当てて反省するわけですが、そこで上のようなことをやってみた次第です。
 学校では一つずつ新しい言葉を積み重ねて覚えていきますが、山の学校ですることが屋上屋を架すようなことにならないよう、逆に「使わないことでより意識して使う練習ができないものか」というのが、今考えていることです。また工夫していきたいと思います。

 本読みは、『オズの魔法使い』の7章を読みました。その前の箇所では、けしの花畑を通った一行のうち、ドロシーとライオンが眠ってしまったのですが、それを野ネズミたちの助けを借りて救出するという下りでした。私個人としては一箇所、「ブリキの木こりは、心がないのでその分、心のある人よりも困った人に親切にしてやる機会がないかと気を配っていました」という表現が心に残りました。
 次回はいよいよエメラルドの都に到着します。