わし丸のぼうけん

 以前2年生のT君が、当時1年生の頃に書き上げてくれた作品です。

『わし丸のぼうけん』

 これは、二月のよるのことだった。
 おれは、けいさつのふりをして大どろぼうとたたかった。
 おれの名はおれだけしかしらない。
 その名は、じぶんでつけたなまえだ。
 それをいまいう。
 その名は、わしまるだ。
 そして生まれて三十ぷんでおとなになった。
 そしてまずたべたものは、ほかのすのわしの子どもだった。

 おれはそれから二十年ご、子どもをうんだ。
 そして三十年ごのいまはすごくわるいじだいになってしまった。
 いまは、むかしとちがってたべものがすくなくなってしまった。

「おれの名はおれだけしかしらない」「その名は、じぶんでつけたなまえだ」というところがダンディーですね。それをそのまま内緒で伏せるのではなく、読者にだけはちゃんと秘密裏に伝わるところが、小説の形式を踏まえていて、上手です。このあたりの感性は、よく本を読んでいる証拠だと思いました。実際家でもお姉ちゃんの真似をして、ちょっと背伸びするような本でもがんばって読んでいるそうです。

最初の食べ物が、他の巣の雛であるところに、厳しい自然の摂理を感じさせます。そのわし丸もやがて親鳥となるわけですが、昔とは違って住みにくい世の中になってしまったことを吐露しています。

「わるいじだいになってしまった」というわし丸の一言からは、一変して、人間の世界が垣間見られます。そこにはわし丸の目を通じての作者のアイロニーが感じられます。

個人的に私は、ギリシアの「こんな(鉄の)時代に生まれてこなければよかった」という、ヘシオドスの言葉を連想しました。

今では何作目かになっているそうなので、また続きを見せに来てほしいです。