経済学入門

百木です。
10月25日のご報告です。
この授業では、前回から「日本経済のこれから」について議論しています(僕が一方的に教えるというより、生徒のUさんと一緒に議論する感じで授業は進行しています)。

題材に取り上げたのは、菅首相の所信表明演説です。
この演説のなかで菅首相は、①経済成長、②財政健全化、③社会保障改革、④地域主権改革の推進、⑤主体的な外交の展開の五つを課題に掲げました。五つの課題のなかで①経済成長を最初の課題に掲げた管内閣ですが、民主党政権は一体どのようにして日本の経済を成長させようとしているのでしょうか。

その具対策として、菅首相は「三段構え」の経済政策を打ち出します。

第一段階:円高、デフレ状況に対する緊急的な対応
第二段階:今後の動向を踏まえた機動的な対応(成長と雇用による国づくり)
第三段階:新成長戦略の本格実施

第一段階は、先日行われた日銀・財務省の為替介入および量的金融緩和(実質のゼロ金利復活)などがその具体的内容ですね。日銀の思い切った踏み込みにも関わらず、残念ながら円高&デフレは止む気配を見せていませんが…。

第二段階は表現が曖昧としていますが、五つの柱があるそうです。
 ①雇用・人材育成
 ②新成長戦略の推進
 ③子育てや医療・介護・福祉
 ④地域活性化、社会資本整備と中小企業対策
 ⑤規制・制度改革

このあたりは言っていることはかなりまともだと思うのですが、現実的に効果が出ているのかどうかが問題です。特に①雇用問題は深刻ですね。大学にいても、学部生の後輩たちが就活に苦しんでいる姿をよく目にします。なんとかもう少しマシにならないものかと思うのですが、今のところ民主党政権のもとで改善の兆しはあまり見られません。何気に⑤規制・制度改革という小泉構造改革の再来的な文言が入っている点にも注意が必要です。

第三段階では、「元気な日本復活特別枠」約1兆円を用意し、需要創造や雇用創出を強化する方策を取るとのことですが、果たして効果はあるのか。また「法人課税の見直し」は果たして妥当な政策か。いずれも考え始めると奥が深い問題です。
※法人所得課税の実効税率の国際比較

日本経済はいまや「失われた10年」ではなく「失われた20年」に突入しようとしています。この10年間の実質成長率は1%未満であり、デフレが進行し続けています。果たしてこの状態から抜け出る方途はあるのか。最近は、そもそも日本のような成熟国が経済成長を追い求め続けることに問題があるのではないか、という議論も出てくるようになりました。そのような広い視野までも含めて、経済について学び考えるきっかけにしてもらえたらと考えて授業を進めています。

次回以降は、日本経済についてさらに深く考えるために、マクロ経済の基礎を講義していく予定です。

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