0512 英語読書会

浅野です。

英語読書会の第9回です。

ハリーはハグリッドから自分が魔法使いであると聞かされますが、そのことが信じられません。というのも、自分が魔法使いならダーズリー家の人たちにいじめられたときに反撃できるはずだからです。

しかし少し考えてみて、自分の身の回りでおかしなことが起こっていたことをハリーは思い出します。ダッドリーに追い回されているときになぜかうまく逃れられたり、無理矢理切られた髪の毛が一晩で元に戻ったりしていたのです。他にも次のようなことがありました。

… and the very last time Dudley had hit him, hadn’t he got his revenge, without even realising he was doing it? Hadn’t he set a boa constrictor on him?

“the very last time”は”when”のように接続詞的に用いられています。この引用箇所で困るのは”he”が多用されていて、誰を指しているのかわかりづらくなっていることです。これはハリーが自問自答している場面であり、”Dudley”と書かれていることから、”he”はハリーを指していると考えられます。一文目は「そしてダッドリーがこの前自分をたたいたとき、ハリーは自分でも気づかずに復讐をしたのではなかったか?」となります。そうすると二文目の”he”も全てハリーだと考えられるので、「ハリーはボアコンストリクター(ヘビ)を自分のほうに差し向けたのではなかったか」と私は解釈しました。しかし、日本語版では「大ニシキヘビにダドリーを襲わせたじゃないか」となっており、最後の”him”をダッドリーだと解釈しています。

こうしてハリーとハグリッドが通じ合っているところに、ヴァーノンおじさんが水を差します。ホグワーツ魔法学校をひどく侮辱したのです。それを聞いたハグリッドは怒りのあまり魔法を使ってしまいますが、幸か不幸かその効果ははっきりしませんでした。ダッドリーをブタに変える魔法を使ったのですが、もともとブタのようだったのであまり変化がなかったというわけです。どうやらハグリッドは魔法を使ってはいけないことになっているようなのですが、ハリーがそのわけを聞こうとすると、明日はすることが多いから早く寝るようにと言われてごまかされました。

その次の日からは5章の「ダイアゴン横町」に入ります。この章では人間界と魔法界との並行関係が描かれています。

夢うつつの状態でハリーが目を覚ますと、フクロウが新聞を運んできて、ハグリッドを執拗につつき続けています。どうやら代金の支払いを迫っているようです。ハリーはハグリッドに言われて彼のコートのポケットを探ろうとします。

Hagrid’s coat seemed to be made of nothing but pockets — bunches of keys, slug pellets, balls of string, mint humbugs, tea bags … finally, Harry pulled out a handful of strange-looking coins.

一文目はおもしろいですね。”but”は「以外」という意味で使われることがしばしばあります。直訳すると「ハグリッドのコートはポケット以外の何ものからもできていないようだった」となります。”nothing but”の部分を少し意訳しますと、「ハグリッドのコートはポケットだけからできているようだった」となります。”be made of ~”は「~からできている」という意味ですが、似たような表現として”be made from ~”というものもあります。どうちがうのかというと、前者は直接の材料を示しているのに対し、後者は間接の材料、つまり加工されていることを示しています。”Wine is made from grapes.”という例文が有名です。

ポケットの中にはいろいろなものが入っていました。”slug pellets”とは何でしょうか。”slug”はナメクジで、”pellets”は丸い小球で丸薬を指したり、ペットのふんを指したりします。「ナメクジのふん」ではさすがに変かなと思いながら日本語訳を見ると「ナメクジ駆除剤」となっていました。なぜそうだと決め付けることができるのかと疑問に思っていたら、ハグリッドはキャベツを育てているとYさんが指摘してくれました。それなら納得です。

そうして”Knut”と呼ばれるコインを渡すとフクロウは飛び去っていきました。これはクヌート(Knut)という王様の肖像が描かれたコインなのでしょうか。お金の取り扱いは魔法界も人間界も同じようです。新聞が配達されるのも人間界と同じなのかなと思っていたのですが、よく考えるとイギリスでは新聞の配達はあまりないような気もします。

フクロウが去るとハグリッドはこう言います。

Best be off, Harry, lots ter do today, gotta get up ter London an’ buy all yer stuff fer school.

方言と省略が非常に多いです。それらを修正してみます。

It’s best to be off, Harry. We have lots of things to do today. We have to get up to London and buy all your stuff for school.

最初の文の”be off”は見慣れない熟語ですが、”off”の中核にある意味さえわかっていれば状況はつかめます。”off”は「離れて」という意味が根本にあるので、”be off”で「出発する」です。”take off”(離陸する」の”off”と同じです。翻訳者の松岡さんの日本語訳がとても上手なので紹介しておきます。

出かけようか、ハリー。今日は忙しいぞ。ロンドンまで行って、おまえさんの入学用品を揃えんとな

しかしお金のことを考えると、せっかく膨らんでいたハリーの希望の風船が破裂してしまいました。ハリーはお金を持っていませんし、ケチなおじさんが魔法学校の費用を出してくれるわけがありません。ハグリッドはそのことを全く心配していないようです。というのも、ハリーの両親が遺産を銀行に遺してくれていたからです。

その銀行とはグリンゴッツという名前で、魔法界にただ一つだけ存在する銀行だそうです。ゴブリンによって経営されているのですが、そのゴブリンとはもめごとを起こすなとハグリッドは注意を促します。敢えて人間界と対比させるなら、ゴブリンはユダヤ人的なイメージなのでしょうか。

ハグリッドはハリーの遺産を引き出すためと、ダンブルドアから頼まれていた用事のためにその銀行に行くことにします。ハグリッドはダンブルドアから頼りにされていることをとても誇りに思っています。二人の間に昔何があったのか気になるところではあります。

そんなところで今回はおしまいでした。次回は6月4日(金)の18:40からです。直前の告知になってしまい申し訳ございません。