H君の作品

かず5年のクラスでは、幾何学的な問題とコンパス・定規を使った工作をしていますが、その延長でH君の希望を聞き入れて、授業の最後にはひねもすをすることにしています。この間、記念すべき第1号作品の戦車が完成し(写真をとっていないのが残念です…)、今は船に取りかかっています。

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H君の船(途中作)

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そしてこっちがお手本。H君がたまたまインターネットで「これ、かっこいい!」と見つけた絵です。李氏朝鮮時代の亀甲船(コブクソン)という軍船で、豊臣秀吉軍の補給線を断つのに活躍した船だそうです。これを見ながらコツコツ製作しています。

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(横から。マストが簡単そうで苦労しました。ちなみに左が前で、竜の船首をつける予定です)

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(オールをあとで連結させるために必要となる芯の部分。戦車を作った時はほとんど私が指示していましたが、これはH君が自分で考えて作っていました。このように「前もって考える」ことができれば、あとは何でも作れるようになります。がんばれ^^!)

このあとは「2本目の帆」「船底」「甲板」「竜の船首」をつければ完成です。4週間でできればいいなあと二人語り合っています(笑)。

* * *

さて、ここからが本題ですが、H君のねばり強さには感心します。これは前に戦車を作った時のことですが、最初にH君が「これ作ってみたい!」と言った時には、理想と現実のギャップを知らずにそう言っているのだろうと思って、しばらくは取り合いませんでした。しかしあまりに熱心に言うので、少し相手をしてみようという気持ちで始まったのでした。

「憧れること」はもちろんいいことです。しかしそれを実現するためには、相当なルーチンワークが必要です。たとえばH君の戦車の場合、キャタピラの「片側」を作るだけでも何と12×4×2×2=192個ものモス部品が必要でした。これを左右あわせれば当然2倍の計算になります。

もちろんキャタピラだけで「戦車」というわけにはいきません。全体となると、ますます部品が必要です。それも小モス1個1個を同じ長さに切り出し、大モスは同じ位置に穴を開けなければならず…と、細かい神経が必要です。そして作りかけてから、1個の部品をつけ間違えただけで、全部をまた作り直さなければならないということも出てきます。

ほとんどの小学生は、当然このような作業があるとは知らず、ただものを見ただけで「作りたい!」「ほしい!」と言います。それは彼らにとっては自然なことですし、無理からぬことです。

けれどもH君は、実際にそういう作業があると知っても、あきらめませんでした。「いい物を作りたかったら、それだけ自分が苦労すればいい」と自分で言ったぐらいで、なかなか骨があるなと思いました。

4週間ぐらいして、とうとう完成に至りました。1つのものを作ったことが大きな自信になったのでしょう。そうなるとますます拍車がかかって、今では「船を作りたい!」となったというわけでした。

「ひねもす道場」でもぜひ彼のような生徒を応援したいと思います。