福西です。その1からの続きです。A君による「シュワルツの不等式」の証明です。

背理法が見事に急所に決まり、「一本!」という手ごたえを感じました。A君も嬉しそうでした。それをぜひ紹介したいと思ってアップします。

シュワルツの不等式

(a^2+b^2)(x^2+y^2)≧(ax+by)^2…(1)

注:a^2=a×a(aの2乗)を表します。

 

A君の証明

背理法で示す。

もし(1)が成り立たないと仮定すれば、

(a^2+b^2)(x^2+y^2)<(ax+by)^2…(2)

となる。

左辺を展開する。

左辺=a^2・x^2+a^2・y^2+b^2・x^2+b^2・y^2

右辺を展開する。

右辺=a^2・x^2+2abxy+b^2・y^2

つまり、(2)で、同じ項を消しあうと、

a^2・y^2+b^2・x^2<2abxy

となる。

さて、左辺を見てみると、a^2・y^2もb^2・x^2も、2乗の数である。2乗の数は非負なので、その和も非負である。よって、

0≦a^2・y^2+b^2x^2<2abxy

となる。

つまり、

02abxy

である。

2abxyがいつでも正になるためには、a、b、x、yのうちの奇数個が負であってはならない。(例:(a,b,x,y)=(-1、1,1,1)なら、2abxy=-2<0となる)。また、0が1個でもあってはいけない。

しかし、命題ではa、b、x、yは任意であり(何の条件も書かれていない)、そのことと矛盾する。

その矛盾が生じた原因は、「(1)が成り立たない」という仮定が間違っていたことにある。

よって、(1)はその反対に成り立たなければならない。

ゆえに、

(a^2+b^2)(x^2+y^2)≧(ax+by)^2

であることが示せた。Q.E.D.

 

A君、お見事です!

このA君の証明を、私が「すごい」と思ったのは、背理法を使ったおかげで、証明すべき式の不等号の向きが逆になり、うんと証明しやすくなったことです。(「背理法って、すごいなあ」と何度もうなりました)。

つまり、どういうことかというと、

不等式の証明では、

B≦Cから出発して、A≦Cを示したい場合、

ABという関係を見つけて、

A≦B≦Cとしなければ示せません。(これがA≦Cとできる、「解ける場合」です)

けれども、よくあるのは、その逆の

AB

という関係しか出てこなくて、結果、

B≦A、B≦C (解けない場合)

としかできずにA≦Cが言えないまま、堂々巡りしてしまうケースです。

(普通に与式を変形させたのでは、そういうことがよく起こります。)

 

しかし、A君の証明では、

「0」「a^2・y^2+b^2x^2」<「2abxy」

という、さっき「解ける場合」で示したA≦B≦(<)Cという順序を作り出すことができています。

一番左から0で押さえることに成功していることが、この証明の一番光っている所です)。

これは、背理法を用いたことによって、(2)式の時点で≧が<になったことによります。

 

さて、この日はそれで時間が来てしまったのですが、A君が興味のあるうちに、お決まりの、

(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)≧(ax+by+cz)^2

の場合でも、上と同じやり方で示せるかどうかを、考えてきてほしいと伝えました。これはぜひやってほしいところです。

「同じやり方」で、「同じ結論」が得られることが、もし実感できたなら、大いに自信が付くことと思います。(私もあとでA君と同じやり方で試してみましたが、「同じようにできる」ことを確認しました)。

 

シュワルツの不等式には、これもまた色々と証明の仕方があります。ただ、ベクトルやら、二次方程式の解の公式を使う方法やら、黒板に書かれたことを人から聞いて納得する以前に、「自分で一度試みて、証明できたことがある」という手ごたえがもしあれば、それは文字通り「自分の力を信じられる」という意味での自信となります。(それは、あの時できたのだから、この時もできるだろうという、よしやってみるか、という、新しいことをどんどん取り込んでいける、帰納的な自信です)。

また、この不等式は、直角三角形、すなわち三平方の定理x^2+y^2=z^2と密接な関係があります。それについては、「内積」というものを勉強した時に、理解するチャンスがあるでしょう。

このように、「幾何と代数が切っても切り離せない関係にある」という理解を、いずれ深めていってもらうために、今から興味の赴くまま、種まきをしておいてくれると嬉しいです。

 

一方、2年生のR君とは、学校でしている「一次関数の応用」のところが難しいという事で、一番典型的な問題を出して、「分かっているところ」と「分かっていないところ」との切り分けを図りました。それについては、また稿を分けることにいたします。

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