福西です。

春学期は、『虚数の情緒』を1章4節の「約数と倍数」(p158)まで読み終えました。

秋学期の初回は、5節の「奇数と偶数」に入る予定でしたが、前回アレフ(無限が持つ濃度)についての質問に、私が間違えたことを伝えてしまっていたので、その訂正をまずいたしました。また、今読んでいる箇所の周辺の話として、「一対一対応」の話をしました。

アレフについて

だれしも小学生ぐらいに一度は「無限+無限=2無限!」と言ったり、無限×2とか無限×3とかで、友達同士どちらが多いかを競い合ったことがあるのではないかと思います。しかし無限にいくら足しても(または引いても)無限であるというのが、無限の不思議なところです。

自然数は、1、2、3、4、5・・・と無限個あります。

奇数は1、3、5、7、9・・・と、無限個あります。

偶数は2、4、6、8、10・・・と、これも無限個。

さて「自然数と奇数(偶数)とは、どちらが多いか?」と聞かれれば、普通のイメージでは、自然数、と答えたくなります。しかしそれらは「一対一対応」(二つのグループの要素をそれぞれ一つずつ突き合わせていくことができる関係)にあるので、「自然数も、奇数も(偶数も)、個数は同じ」と数えることになります。有限なグループで考えればもちろん自然数の方が二倍多いわけですが、終わりがないところではその差が容易に詰まる、というのが不思議なところです。

これは『虚数の情緒』でもあとに出てきますが、実は、有理数の持つ「無限個」も、自然数の持つ「無限個」と「同じ」と数えられます。

ではどんな無限個でも同じか?というと、「そうではない」と言った人がいて、それがカントールという人です。「無限にも濃度がある」と。

濃度とは、無限は無限でも、どれぐらい濃い無限か?という議論をするための概念なのですが、無限個の要素を持つ二つのグループが、もし「一対一対応」するなら、どちらも「同じ濃度である」と言うことにします。そして一対一対応でないなら、どちらかが濃くて、どちらかが薄い、ということになります。

そして自然数の持つ濃度のことを、「アレフ0」と名付けることにします。(アレフはヘブライ語のℵで現しますが、文字化けが怖いのでカタカナにしています)。

自然数全体と、実数全体とは一対一対応できないので、実数全体の濃度とは異なります。(自然数の方がまばらで、実数の方が濃い)。実数の持つ「点点々・・・」の濃さは、そのまま「連続」という概念を裏打ちする意味で重要です。連続と言えば実数、実数と言えば連続です。

さて、自然数の次の濃度を「アレフ1」と名付けることにします。

しかし、ここで問題です。

素直に、実数の濃度が「アレフ1」である、と言いたいのですが、でも本当にそうなのでしょうか?

自然数の濃度(アレフ0)と、実数の濃度の間にも、中間の濃度があるのではないか?(またもしそうなら無限にグレードがあるのでは?)という議論があります。

そして実は、「実数の濃度=アレフ1」であるか否かは、いまだに証明がなされていません。

(これには、ちょうどユークリッド幾何の「中」からは第5公準が証明できなかった、というようなイメージを持ちます←ただし証明されるかもしれず、その場合はこのたとえは間違っていることになります)

ちなみに自然数と実数の中間の濃度を表す集合はいまだ発見されていないそうです。

そこで、「実数の濃度はアレフ1である」(つまり自然数と実数の中間の濃度はない)と仮定しよう、と言う人もいて(カントール)、これを「連続体仮説」と言います。(名前は単にかっこつけてるだけで、連続体とは実数のことです。自然数(バラバラにちらばる無限個)の濃度の「次」は、実数(つながっている無限個)の濃度だ、という仮定、という意味です。)

もし自然数と実数の中間の濃度がないとするならば、アレフ2、アレフ3、アレフ4・・・という濃度も、わりと機械的に考えることができます。

ここで実数と同じ濃度を持つ集合なのですが、自然数の集合によってつくられる「べき集合」というものと一致(一対一対応)します。

べき集合と言うのは、もとになる集合Aから、いくつか(全部でもよい)の要素を取って作った集合(部分集合)を、また一つの要素として数える集合のことです。何のことかというと、たとえばA={1、2、3}という集合から作られるそれは、

{}(空集合)←全部選ばない

{1}←1は「選ぶ」、2は「選ばない」、3は「選ばない」

{2}

{3}

{1、2}←1は「選ぶ」、2は「選ぶ」、3は「選ばない」

{1、3}

{2、3}

{1、2、3}←全部選ぶ

の計8つを要素に持つ集合です。

A={1、2、3}は、要素が3つですが、そのべき集合になると、8つに増えます。実はこれがすごい増え方なのです。{1、2、3、4}から作るべき集合なら要素は16個で、{1、2、3、・・・、n}のべき集合なら2^n個となります。(ちょうどAの各要素について「選ぶ」か「選ばない」かの2択を繰り返すことになるので、2×2×2×・・・という「2のべき乗」で増えます。べき集合と言うゆえんです)

これがA={自然数}となれば、そのべき集合は、

2^{自然数}←^はべき乗の意。そして2の肩に乗っているのが無限個=アレフ0

の要素を持ちます。

つまり、べき集合を作ると、もとの集合にくらべてすごい増え方をする、そしてこの増え方が「あまりに爆発的」なので、もとの集合と一対一対応させようとしても、もはや追い付かなくなって、ここに「新しい濃度」の集合が作れた、ということになります。(一対一対応できないという証明は手に余るので割愛します)。

さらにこれが実数と一対一対応することが言えれば、実数の濃度=2^アレフ0(2のアレフ0乗)である、と言えることになります。(これも私にはできませんが成り立ちます)

そして、先の「自然数の濃度の次の濃度は、実数の濃度であろう」という仮説(連続体仮説)を採用すると、

1)アレフ0=:自然数の濃度(定義)←一応、可算濃度という名前が付いています

2)アレフ1=(?)実数の濃度=2^アレフ0(最初の=は仮定、二つ目の=は証明による)

3)アレフ2=2^2^アレフ0

4)アレフ3=2^2^2^アレフ0

・・・

と次々と考えることができます。

しかし、2)のところで「連続体仮説」という仮定をおかないとすると、実数の濃度は「アレフなんとか」のままであり、アレフ2、アレフ3・・・を上のように具体的な計算で現すことは(今のところまだ)できないことになります。

また、たとえば自然数と実数の間には無限に異なる濃度が存在する、というような別の仮定を、連続体仮説の代りに採用すれば、(おそらく)その仮定の上で成り立つ新たな数学を考えていることになるのでしょう。

さて、実数全体は、1次元の直線(x軸)に相当するわけですが、2次元の平面(xy平面)も、1次元の直線と一対一対応します。(証明の方法を詳しく知りたい方は「ペアノ曲線」という項目で調べてみてください)

2次元平面に1次元足した3次元空間も、濃度は一緒です。

つまり次元が増えるだけでは、濃度は上がらないことになります。次元は濃度とは別概念というわけです。(ここを私は間違って伝えてしまっていました)

 

次に、一対一対応のことを書こうとしていたのですが、長くなったので、ここで切ることにします。

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