ことば6年(0906)

福西です。秋学期もよろしくお願いいたします。

このクラスでは、引き続き『モモ』を読んでいます。この日は第8章を読みました。

前回、モモのいる円形劇場にも灰色の紳士がやってきました。その男は、ビビガールという「完全無欠」な着せ替え人形や、そのたくさんの付属品を、次から次へとモモに投げ渡しては、「ほしいだろう?みんなあげよう。これで遊べば友達と遊ぶ必要なんかないんだ」と早口にまくしたてます。それは一種異様な光景でした。しかしモモの「聞く力」は灰色の紳士にもある変化を及ぼします。モモの黒い瞳によって見つめられていた訪問者は、ひとりでに口調がおかしくなり、たくらみを洩らしてしまいます。それゆえにあわてて立ち去っていった、というのが、前回のあらすじでした。

モモは、事の真相をジジとベッポに打ち明けます。そして子供たちも円形劇場に集まりました。 町の様子がおかしくなり始め、モモの居場所を訪れる大人も子供も減ってきたことの原因が、「時間貯蓄銀行」と名乗る灰色の紳士たちにあること、実はそれが「時間泥棒」であることを知ったみんなは、これからどうすべきかを討議します。ジジはヒロイックな案を提示しますが、ベッポは危険がモモに及ぶことを心配して慎重になることを訴えます。けれども他に案が出てこず、結局力を合わせることを第一に考えて、ジジの計画を遂行します。たくさんの横断幕を作り、デモの行列で町中を練り歩いて、大人たちに危険を知らせようとしたのでした。ここまでが今回読んだ箇所でした。

残りの時間では、お話作りの下準備にかかりました。生徒たちは去年の高木先生のクラスで、リレー小説の大作を書いた経緯があり、それがどんなお話だったのかを聞いたところ、嬉しそうに語ってくれました。舞台は近未来のSFで、魔法と科学がそれぞれ発達しています。主人公はマウントという名前の少年で、ある日その身に災難が降りかかり、その原因を突き止めるための旅に出ることになります。そして海上、海中、地中、空中の四つの町を回り、そこで一つずつ手がかりを得、それらを合わせることで、事の真相(敵の正体)が分かって、解決に向かうという筋立てです。

複数の生徒がそれぞれ持ち寄ったアイデアが、一つの物語の中で次々と調和して文字になっていく展開には、「これは楽しいなあ!」と即座に感じました。自由奔放な空想だけでなく、それを支える一種真剣な構想とがバランスよく織り交ざり、一言で言えば、「よく書けたなあ」と脱帽です。

そしてエピローグは、各自それぞれが書いてくる、というところで終わっているそうで、一区切りはついているそうですが、せっかくなので、エピローグがまだ頭の中にある人はそれを書いてみたり、また書けている人はマウントのその後のお話を書いてみてはどうかと提案しました。あるいはマウントのお父さんや、おじいさん、お兄さんといった家族や、因縁のある「敵」の組織など、とてもいい味を出していると思ったので、今度はそれらを主人公にして、別視点で書いても面白いかもしれません。(スピンオフ作品というものですね)。

いずれにせよ、同じ舞台でお話を書くことには大賛成ということになりました。次回がまた楽しみです。