7/24 歴史入門前期まとめ

まずはじめに5月末以降のブログの更新ができなかったことをお詫び申し上げます。来期からは少しずつでも報告するようにいたします。授業メモを頼りに6月以降の6回分ほどの内容を何度かに分けてまとめようと思います。

さて、今回は後期以降の授業をより良いものにしていくためにも前期の授業を全体的に振り返ってみることにします。

今年の4月に前任の岸本先生から歴史入門の授業を引き継いだのですが、授業の方法を少し変えました。岸本先生は毎回プリントを作り、とりわけ前半は世界史の基礎知識を身につけるような方法でした。これに対して、私はプリントを作らずに原則として板書で説明し、生徒さんは高校の教科書の基本的知識を身に付けていることを前提にして授業を進めました。生徒さんの反応を見ますと、授業方法の変更による大きな混乱はなかったようでスムーズに引継ぎができたようで何よりでした。

今期用いたテキストは川北稔『イギリス近代史講義』です。ブログの最初の方でも紹介しましたが、川北氏はイギリス史をイギリス一国だけからではなく、世界全体との関係から考えることで新しい視野をもたらしました。彼の考えの基本になっているのは、I・ウォーラーステインが唱える「世界システム論」と呼ばれる考えです。一定の手順を踏めばどんな国でも経済成長が可能であるというそれまでの考え方を批判して、ある国の経済成長は他の国との関係に規定される、つまりは利益を享受できる国があるのはその分不利益を被っている国もまた存在せざるをえないということです。例えば、本書の中ではアフリカの黒人奴隷を使ったカリブ海での砂糖プランテーションで得られた利益がイギリスの産業革命に寄与したことが述べられています。本書の内容はそれだけではありません。それまで国家の経済成長を考える時には生産が重要視されていたのに対して川北氏は消費に注目することでまた新しい視点を加えました。消費があるからこそ生産がある、という視点に立ってイギリス人に砂糖入り紅茶や綿織物が流行する過程を描いています。

授業は基本的には毎回1章ずつ読み進める形式でしたが、少し難しいところは何冊か参考文献を紹介しながら、補足説明を加えていきました。その際に、教科書的な意味で重要な箇所が理解できているかどうか、生徒さんに私が質問することも少なくありません。生徒さんは苦戦することもしばしばでしたが、私がその後何度も確認することで丸暗記ではなく真の意味での理解につなげていけたように思えます。

最後の1回は時間が余ったので、同じ著者の作品(『砂糖の世界史』)を生徒さんに読んできてもらい、私の前で発表してもらうことにしました。初めてのゼミ発表ということもあり、要点をコンパクトにまとめるのには苦戦していたようです。こればかりは本のまとめ方についてもう少し詳しく指導しておくべきだったと反省しております。しかし、内容把握はきっちりできていたようで初回にしては十分だったと思います。

また、最後の授業では今期の授業に関連する文献リストを配り、興味があれば夏休み中に読んでみることを勧めました。生徒さんはとても満足していたようで、深い知的探究心が感じられました。