今号の山びこ通信(2013/6/17)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)

 

『ロシア語講読』(担当:山下大吾)

ちょうど一年前に開講した「ロシア語入門」クラス。受講生Tさんとのマンツーマンの授業も前学期の途中に初歩的な文法を終え、講読クラスとなって今に及んでいます。講読のテクストはトゥルゲーネフの『散文詩』です。

わが上田敏もその価値を認め、英語からの重訳を試みていることからも十分窺えますが、一篇ごとに得られる詩的世界の豊かさは、その簡潔の美の極致とも評すべき文体とも相まって、一読決して忘れられぬ印象を与えます。動詞や形容詞は早々と描かれるものの、肝腎の主語は文末になってやっと現れ、我々読者の意識を無理なく高めつつ纏め上げる構成。老婆を背後に座り込む男の前にひたひたとひとりでに迫りくる黒い斑点や、「意味深長なこと」と断った上で話された言葉に現れる散文の中の韻律。代名詞が続き、まるで靄がかかったように焦点がぼやけて展開する筋の途中、徐々に色鮮やかに浮かび上がるバラの花。そのほかにも形容詞のアソナンス、その背後に揺曳する当時のロシアの重々しい雰囲気…。いずれも訳文ではどうしても抜け落ちてしまう、トゥルゲーネフの記したロシア語原文でなければ味わえない美しさです。

このようなテクストを毎週Tさんと二人で読み進めております。今学期の途中から文法解説の大半をTさんご自身に担当頂き、それを私が確認するという手順に改めました。ノート一杯に書き込まれたメモは情熱の発露そのもの、正答率の高さも言わずもがなです。

(山下大吾)

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