かず6年

福西です。ことばのクラスに来ているY君が、かずにも興味があるとのことで、新しく参加してくれました。K君、T君も、いつもの調子で張り切ってくれています。みなさん、今学期もよろしくお願いいたします。

さて、このクラスでは、冬学期に引き続き、

1)数学的な設問を1題、または学校の復習をする週

2)論理パズルをする週

この二つを柱に、交代交代でしながら取り組んでいこうと考えています。1)の数学的な設問とは、たとえば「正100角形の対角線は何本か?」みたいなことを小一時間考えることをします。また、論理パズルは、K君とT君にとってはもうおなじみですが、Y君にははじめてです。最初は簡単かもしれませんが、ちょっとずつ難易度を上げていくので、慣れている人も油断せず取り組んでください。(急に分からなくなることが出てきます!)

さて、初回のこの日は、「円周率」の『率』とは何ぞや?」という質問をしました。

ちょうど4年生の頃に、円については習っており、それを今もしっかり覚えているかを確認しました。直径、半径、中心、円周(この言葉もしっかり覚えていました)について、てきぱきと答えてくれたので良かったです。

そして「円周率とは何?」と尋ねた時、「3.14」という答が口々に返ってきました。もうおなじみで「知ってる」という感じでした。より詳しく知っている生徒は、「3.141592」と言っていました。実は、3.14でも、3.141592でも、どちらも「3.14(1592)・・・」と、その「・・・」の方を強調することがむしろ大事なのですが、その「・・・」のことについては、またおいおい伝えようと思います。

さて、小学生の間では計算のためには3.14と答えておければ十分だと思いますが、そこで問題となるのは、数字の「意味」の方です。私は小学生の頃、「率」という言葉が苦手で、なかなか分からなかった記憶があるので、それで彼らにも確認してみました。

「円周が長さであることは分かったけれど、円周率の『率』」とは何でしょうか? それは3.14「m」という、長さでしょうか? それとも違うものでしょうか」と。

すると、生徒たちには「えー?」と、返答に困ったような様子が見られました。

そこで、他に、率のつく言葉として、「打率」という言葉を提示しました。すると、「防御率」という言葉が生徒からも返ってきました。

さらに、私は「比」という言葉を出しました。(この言葉の意味は、あとで「分数」という意味でとらえることになります)。ただ「比」という言葉にはまだあまりなじみがないようだったので、そこで別の言葉に言い換えることを考えました。

最終的には、生徒たちの一番わかりやすい言葉として、「倍」という言葉がクラスでは見つかりました。つまり、3.14というのは、3.14倍という意味だったのです。

つまり、「○○の3.14が円周」であり、その「3.14倍のことを、円周率という」、と。

さて、上の○○には、何が入るでしょうか。とたずねると、「それは、直径!」と答が返ってきました。

そうです。そして、そのように、「倍」という簡単な言葉と、「直径の3.14倍」というイメージが、円周率という言葉に定着していれば、十分かと思います。

言い換えると、直径1m、10m、また100mの円を作ろうと思ったら、ロープは何m必要か? という「問い」に対して、円周率はその「答」を与えてくれるというわけです。

これはくどくなりますが、この「円周率」は、円の大きさによって変化するかどうかもたずねてみました。すると、「一定である」という返事が返ってきました。

普通なら、円(の直径)が大きくなればなるほど、円周は長くなるというイメージにつられて、円周率も大きくなりそうな印象があります。小さい円や大きい円の中には、直径に対して円周が、2倍のものがあったり、4倍のものがあったり、と、まちまちになることはないのだろか? と、普通なら疑問に思うところです。

ですが、授業でも実際に試してみたところ、やっぱりそれは3.14で一定でした。(缶のふたなどを使いました)。そのような「(関係を表す)数」を、2000年前に発見したギリシャ人はすごいなあと思わざるをえません。

さて、たとえばの例ですが、この「円周率が一定」という事実があるおかげで、たとえば以下のような問いにも、まぎれなく答えることができます。

「地球の円周は、赤道周りは40075m(極方向は40008m)で、今その地球がでこぼこのない完全な球だとします。そして、地上に置かれ、地球を一周した40075mのロープがあったとします。次に、そのロープ全体を地上から1mの高さに持ち上げたとします。そして、それをまた地球一周させるとしたら、あと何mのロープが必要になるでしょうか?」

と、このような問いをとっさに出された時、きっと、ものすごく長いロープがまた必要になるのでは? と直感的には思ってしまいます。これは中谷宇吉郎博士の本のどこかで書かれていた話だったかと思いますが、答は、意外にも「短くてすむ」ということが、「円周率が一定である」ということから分かります。

生徒は、最終的には、「円周というのは、円の周りの長さで、円周率というのは、円周が直径の3.14ってこと。そしてその倍率は、円の大きさによって変わらない」と。だいたいそのような答をしてくれました。

 

円周率について以上のように足固めができたので、残りの時間は、「円の面積」について考察しました。(これはまだ学校では習っていない範囲です)。

「なぜ、円の面積は、半径×半径×3.14(円周率)で計算できるのか?」、あるいは、「半径を2回かけているのはなぜか?」というのが、問いです。

その前段階として、まず「三角形の面積が、なぜ底辺×高さ÷2なのか?」という問いを出してみました。すると、最初は直角三角形を引き合いに、「長方形の面積が、たて×横なので、その半分に折ったのが三角形。だから、たてが今高さで、横が底辺とみて、底辺×高さ÷2」と、前に出てきて説明してくれました(これはT君)。

そして次に、任意の三角形についても、うまいこと、二つの直角三角形に分解することを思いついてくれて、「先の(T君が説明してくれた)ことを2回すればいい」という説明をしてくれました(これはK君でした)。

そこで続いて、K君が、「円も、ばらばらにして、四角形の中に並べ直したら、それでたて×横で、面積が求められるんとちゃうか?」と、言ってくれました。

ナイスです!

というわけで、次に「円をばらばらにして、四角に並べ直すこと」を、実際に作図して体験してもらいました。これはおそらく、学校でもまた習うことになるかと思います。(ちなみに円の面積を四角形のそれに置き変えることは、代数的には不可能なのですが、微分積分を使って可能となる方法です)

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さて、実際に円を切り分けて作ってもらった、上の長方形で、「横」にあたるものが、円の一体何にあたるのか? それが自分の力で説明できるようになっていれば、なぜ半径×半径と、円の面積の公式にはそれが2回出てくるのかに、自信が持てることと思います。

来週、またこの日のおさらいをします。