西洋古典を読む(2021/10/27)

福西です。

ウェルギリウス『アエネーイス』(岡道男・高橋宏幸訳、西洋古典叢書)を読んでいます。

7巻の107-248行を読みました。

アエネーアスの息子イウールスが、あまりにおなかがすいたので、パンを盛る器としてのパンまで食べてしまいます。

「おい、食卓まで僕らは食べ尽くしたのか」と、イウールスが言った。(7.116)

‘heus, etiam mensas consumimus?’ inquit Iulus

おい(heus)、食卓を(mensas)も(etiam)我々は食べ尽くした(consumimus)のか? とイウールスは(Iulus)言った(inquit)

これを聞いたアエネーアスは、喜びます。3巻でケラエノー(ハルピュイア)に受けた以下の予言が、じつは呪いではなくて、単なる嫌がらせだったと知ったからです。そして、イタリア到着の裏付けを得たからでした。

「イタリアへ着けるであろう、港に入ることも許されよう。

しかし、約束された都を城壁で取り囲むまでには、

まず、われらに加えた不当な殺戮ゆえの忌まわしい飢えが(dira fames)おまえたちに

食卓をかじらせ(absumere mensas)、顎で嚙み砕かせずにはおかない」(3.254-257)

アエネーアスは祈りをささげます。(このときユピテルが相槌のように雷を鳴らします)

そしてラティーヌスの都へ、イリオネウスを代表使節として送ります。

使節がラティウムの都(アエネーアスたちから見ればうらやましい対象)に着くまでの描写には、第1巻のカルターゴーのことが思い出されます。

さて、ラティーヌス王に拝謁したイリオネウスは、援助ではなく同盟関係を求めます。

武力はトロイア戦争で実証済みだとも言います。

(不当に扱えばただじゃ置かないぞ、みたいな感じで物騒ですが、それが外交というものなのでしょうか)。

ラティーヌス王は、その前に「外国人を婿にせよ」という予言を受けています。それなので、敬虔さ(pietas)をアピールしつつ、全面的にウェルカムな態度を示します。

しかし王の敬虔さ(pietas)は、残念ながら勇敢さ(virtus)を欠いたものでした。

そのことが、これからイタリア中を戦争に巻き込むことになります。