ことば1~2年(2019/7/2)

福西です。

春学期最後は、次の句を紹介して、しめくくりました。

閑さや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉

そのあと、これまでに暗唱した、春の句と夏の句をおさらいしました。

つばめつばめ泥が好きなる燕かな   細見綾子
チューリップ喜びだけを持つてゐる  細見綾子
水の地球すこしはなれて春の月    正木ゆう子
猫の子のふにやふにやにしてよく走る 大木あまり
長靴はどこへもゆけて水温む     茨木和生

あめんぼと雨とあめんぼと雨と    藤田湘子
青蛙おのれもペンキぬりたてか    芥川龍之介
幸せのぎゆうぎゆう詰めやさくらんぼ 嶋田麻紀
おおかみに螢が一つ付いていた    金子兜太
筍や雨粒ひとつふたつ百       藤田湘子
ひつぱれる糸まつすぐや甲虫     高野素十
翅わつててんたう虫の飛びいづる   高野素十
そら豆はまことに青き味したり    細見綾子
滝の上に水現れて落ちにけり     後藤夜半
やれ打つな蠅が手をすり足をする   一茶
五月雨をあつめて早し最上川     芭蕉
五月雨の降のこしてや光堂      芭蕉
閑さや岩にしみ入る蝉の声      芭蕉

『黒ねこサンゴロウ3 やまねこの島』(竹下文子、偕成社)の「2 船旅」「3 サンゴロウ」を読みました。

ナギヒコは、サンゴロウとマリン号で出航します。まだ行先は告げられていません。ナギヒコは食事係に任命され、心の中で文句を言います。一方、サンゴロウの海の仕事ぶりを見て、天性の船乗りであることに感嘆します。

ナギヒコは、サンゴロウと初めて出会った頃のことを思い出します。ここで、サンゴロウは記憶喪失だった、という事実が読者に語られます。(2巻のサンゴロウがミリと出会ったときに見た、「覚えていないけれど来たことのある場所」とつながります)。

読み終わってから、また最初のページに戻り、1ページ1問ずつの割合でクイズを出しました。

 

紙芝居『箱根用水』(川崎大治/脚本、久米 宏一/絵、童心社)読みました。

時は江戸時代。貧しい深良村の田を救うために、山をくりぬいて芦ノ湖から水を引いた、友野与右衛門という技術者の話です。

友野は、幕府の役人に「勝手なことをするな」とつかまります。すると、これまでお金を貸していた商人は役人の目を恐れて手を引いてしまいます。工事が止まると、こんどは友野の妻が獄中の夫の代わりに、家財を売り払い、資金を都合します。そのことに奮起した村人の力によって、ついに箱根用水は完成します。

「水だ! 水だ! 友野さま──っ、水がきましたぞーっ。」

牢にいて、じかに見ることのできない友野は、合図として上がった狼煙をかわりに見ることになります。

そして、稲が実る頃、友野は江戸に送られ、はりつけに処されたのでした。

紙芝居の解説には、

…天草の乱、由井正雪の討幕未遂事件などで神経をとがらせていた幕府は、新しい水利による新田開発の事業も、箱根のぬけ道を作るのではないかと疑心暗鬼で、友野をなんども召しとらえたあげく、最後は暗に葬ったのであろう。政治的にも経済的にも、過酷な条件の中で、一二八〇メートルものトンネルを、狂いもなくほりぬいた技術と精神…

と記されています。受講生たちの心にも、何かが残ったようでした。

 

春学期のクラスはこれでおしまいです。

夏休み用に、俳句の紙を渡しました。また作ってくれると嬉しいです。

それでは、9月に会いましょう。