『白い盾の少年騎士(上)』(トンケ・ドラフト、西村由美訳、岩波少年文庫)を読んでいます。

第5章の「6 奇襲の道」「7 覆面をとった赤い盾の騎士」を読みました。

ティウリはひそかに脱出の準備を進める一方、たびたび様子を見に来る黒い騎士のチェス相手になります。黒い騎士は、ウナーヴェン国に進軍する道を設営中であることをほのめかします。また、ティウリに味方になるように誘いをかけてきます。

ティウリがチェスに勝ちます。黒い騎士は約束通り、素顔を見せます。エヴィラン王、すなわちイリディアンの双子の弟フィリディアンでした。

彼は、うっとりするような声で、「懇願するように」言います。

「わたしは、善行だけを行いたい、と思っている。悪いことをしたのは、そうするように仕向けられたからであって、自分の意思からではなかった。わたしも、そなたと同じように捕われの身だ。それで、わたしは自由になりたいのだ」

と。

双子の運命に決着をつけ、「憎むこと」から心底解放されたいと願っているようでした。あるいは「人からもっと愛されたい」と。そしてその協力者として、自分と袂を分かつ前のエトヴィネムを、第二のエトヴィネムの姿を白い盾のティウリに重ね見ているようでした。

しかしティウリは、「あなたがエトヴィネム騎士を殺した」と、エヴィラン王が見ている心の世界に過去の現実を突きつけ、仲間になることを拒否します。

たちまちエヴィラン王の態度が変わります。

「わたしは、エトヴィネムの名を言うべきではなかったな。

だが、そなたが言わせたのだ。」

先の「仕向けられた」という言葉が重なります。

エヴィラン王は、「白い盾は一つもない。」とつぶやきます。この一言で、ティウリはいよいよ殺されることを悟ります。かつてのエトヴィネムのように。

息詰まる展開が続きます。

次回、上巻を読み終えます。

 

 

【備考】

再読して、私がはっとなった点を書き留めておきます。

フィリディアンの言葉:

「長男は皇太子、王位後継者だ。次男は何ももらえない。だが、次男はその兄よりもほんのわずか若いだけ。多くの点で、長男と同じだ

この「多くの点で」「同じ」というのが、まるでチェスの先手・後手のようだ、という点です。

駒の初期配置は先手も後手も同じ。ただ、どちらが先に指すかの1手が違うだけで。

そして、チェスの先手は白。後手は黒。

ティウリは先手。イリディアンに教わった手を思い出して、フィリディアンの黒いキングをチェックします。

イリディアンとフィリディアンは双子。前者はウナーヴェンの皇太子。後者は出奔してエヴィラン王になった、ウナーヴェンに対する復讐者。

その確執をチェスの対決がなぞらえていることはすぐにわかりますが、先手後手の「同様さ」にも双子という意味が込められていそうだと、今回みんなと読んで、はっとなりました。

フィリディアンは、ティウリにこう言います:

「チェス競技は、この世で唯一の公正な戦いだ。」

「われらは戦いの勝敗を決める。公平な戦いの勝敗を。」

しかし実際には、父ウナーヴェン王の愛情が公平でない、足りないと感じています。

「(ウナーヴェンとエヴィランの)二国は、われらの前にある白い駒と黒い駒の勝負ほどのちがいもない。」

次回、チェスの白と黒を入れ替え、ティウリは勝っても負けても殺される二局目に挑みます。脱出の手筈が整う「三日目の夜」までの時間を稼がないといけないからです。

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