かず4年B(0921)その2

福西です。

さきほどの稿の続きです。

 

第2問

A+B=C とする。

Aをかけ算でバラバラにする。(たとえば6=2×3)

Bもかけ算でバラバラにする。(たとえば25=5×5)

Cもかけ算でバラバラにする。(たとえば31=31)

 

A×B×Cをかけ算でバラバラにし、重複していない数だけのかけ算に直す。その値をDとする。

(たとえば6×25×31=2×3×5××31→D=2×3×5×31) (5が重複しているので取る)

 

さて、A+B=C>D となる数A、B、Cの組を見つけよ。ただし、A、B、Cは異なる自然数(1,2,3…)とする。

 

また、もし見つけられた人は、A、Bがどちらも同じ数で割れない組も見つけよ。(A=6、B=8のような、どちらも同じ数で割れる組を除いて考えよ)

 

この問題自体は、「ABC予想」そのものではないのですが、それと関係した「糸口」の問題となっています。そしてこの問題も、第1問のときと同様に、「無限組」の答を持っています。(ただし見つけるための規則性は、いまだ知られていないそうです)

一つ二つ、例を見ていきましょう。

 

1)A=8、B=25の場合

A=8=2×2×2

B=25=5×5

C=A+B=8+25=33

33=3×11

A×B×C=2×2×2×5×5×3×11 → D=2×5×3×11=330

 

これは、あきらかにC<D (33<330)であるので、題意を満たさない。

 

2)A=7、B=11の場合

C=7+11=18

18=2×9=2×3×3

A×B×C=7×11×2×3×3 → D=7×11×2×3=462

 

これもC<D (18<462)となってダメ。

 

このように思いついた数をどんどん試していくと、C>Dとなる数の組み合わせは、ありえないような気がしてきます。でも、本当にそうでしょうか?

 

これはチームで考えてもらったのですが、あるチームは、2)のようにAとBに「素数」を使うと、たちまち駄目になる(Dが大きくなる)、という感触を掴んでくれていました。それを理屈で説明するのはなかなか難しいことですが、上のようにあれやこれやと考えて、数で遊ぶうちに、何か感覚のようなものが培われていくことは、土台作りとして大事なことだと思います。

 

さて、授業では、次のような数を一つ見つけてくれました。

 

生徒たちの答 「A=2、B=6の場合」

A=2

B=6=2×3

C=A+B=8

8=2×2×2

 

A×B×C=2×2×3×2×2×2 → D=2×3=6

 

なんと、CD (8>6)です!

 

ということで、(A,B,C)=(2,6,8)というのが答に一つ見つかりました。

 

この発見は、大事な一歩です。

 

そこで残りの時間は、次に「もっと面白い答」を見つけてくださいと提案しました。つまりどういうことかと言うと、今(2,6,8)は、どれも2で割れてしまいます。なので、今は「AとBがどちらも同じ数で割れない」ような組を探し出してください、と条件を厳したのです。はたして、そんな数は見つかるのでしょうか…?

 

しばらく数字をあてはめているうちに、

 

「えー、そんなのあるか!?」

「絶対ないわ」

 

という声が聞こえてきました。でも、あきらめるのはまだ早いです。時間はまだたっぷりあります。(あと20分ほどありました)

 

そこで、私もこっそりと挑戦してみました。

 

3)A=9 、B=16の場合

A=3×3

B=2×2×2×2

C=9+16=25

25=5×5

A×B×C=3×3×2×2×2×2×5×5 → D=3×2×5=30

C<D (25<30) おしい!

 

いや、まだまだ! そういえば1(自然数)も使っていいのですよね。ということは、もっと単純に考えてみることにします。たとえば、

 

4)A=1、B=8の場合

C=1+8=9

9=3×3

A×B×C=1×2×2×2×3×3 → D=2×3=6

おお! これは…

C>D (9>6)ですね。というわけで、(1、8、9)は一つの答です。

 

こんなふうに、ちゃんと見つかるので、安心して下さい。

 

さて、このような組は、実は無限組あるということが分かっています。授業では、そのうちの「一つ」(ないし二つ目)を探してもらったわけですが、30分では、上の1つの答以外は見つけることはできませんでした。

 

そんなこんなで、上のような問題も「考えてみる価値がある」ということを、頭の隅にでも留めておいてほしいと思って、紹介しました。授業のうちに見つからなくて、もし「くやしい」と思った人は、ぜひまた力をためて挑戦してみてください。

 

#以下は、保護者の方への注です。

#「ABC予想」の場合は、次のように考え出されました。ここでA、B、C、Dの定義は上の記述どおりとし、またA、B、C(オリジナルの問題ではCも含めます)は同じ数で割れない(互いに素である)組とします。

1)A+B=C>Dとなる(A,B,C)は、無限組存在する。

2)A+B=C>D^2となる(A,B,C)は、存在しないであろう。(これは未解決の予想でした)

3)A+B=C>D^1.5となる(A,B,C)は、有限組存在するであろう。(これも未解決の予想)

では、答(解)の数が無限から有限に変化する、その「ぎりぎり」とはどのような状況か? つまり、D^(1+ε)、0<ε<1とすると、境目となるεの値はいくらか?(D^2→D^1.5→D^1.3→D^1.1…と、どんどん小さくしていき、答の数が有限から無限に変化する、その「ぎりぎり」はどこか?)

ABC予想:「A+B=C>D^(1+ε) ε>0としたとき、εを限りなく0に近づけても、答の数は有限組であろう。そしてε=0のときは無限組ある」

 

#この有限と無限の境目に対する興味は、1999年に解決された有名な「フェルマーの定理」と似てます。フェルマーの定理では、x^n+y^n=z^nを満たす自然数(0を除くのがミソです)の解は、n=1、2の時は無限に存在し、n=3以上のときはたちまち存在しなくなってしまいます。(「存在しない」も0個ということで有限のうちです)

 

#上のABC予想は、フェルマーの定理のように「解がまったくない」ことではなくて、「解が有限個である」ことが興味となっているので、すっきりしない問題設定かもしれません。けれども解が有限個であることが分かって、何が嬉しいかというと、一つには、コンピューターを回す意味が出てくることです。「いつか終わりがある」ということは、俄然そのような意味を持ちます。(実際、「四色問題」という未解決問題は、コンピューターで解かれました)。一方、もし無限個であれば、それはπ=3.141592…と続ける作業と似ていて、コンピューターを回すことにはスペックを競うぐらいの意味しかないことになります。

 

(注意)上記は私の理解によるものです。何分、私は「ABC予想が解決された」というニュースを聞いて、はじめてABC予想なるものがあることを知りました。それなので、もし間違いがございましたら、申し訳ありません。その都度訂正いたします。