ことば4年B

福西です。このあいだ『こぎつねルーファスのぼうけん』を読み終えました。山びこ通信でも少し触れましたが、そのご報告までに、以下に書き記しておきます。

 

(『こぎつねルーファスのぼうけん』アリソン・アトリー/作、石井桃子/訳、岩波書店)

 

アリソン・アトリーは、『時の旅人』の作者だと言う方が、むしろピンと来る人が多いのではないかと思います。『ルーファス』は、その同じ作者が、若いときに夫が死んで一人で子供二人を育てなくてはならなくなった時に、その子供たちをあやそうとして語り聞かせていた内容をもとにして書いた本です。

 

ちなみに児童書では、身近な子供に語る必要から生まれた作品に良著が多いと感じるのですが、その例として私が思いつくものでは、『ルーファス』の姉妹作である『チム・ラビットのぼうけん』や、A・A・ミルンの『クマのプーさん』、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、キャサリン・ストーの『ポリーとはらぺこオオカミ』といったものが挙げられます。ただ残念ながら、児童書というものは、その呼びかたからして、大人の時期になると、ついつい読まなくなってしまいがちです。が、かといって肝心の子どもの頃にそれを読んで育っているかというと、そうでもないのが現実です。つまりどっちつかずのまま本棚の前を素通りして、背表紙の名前だけは知っている、というケースが非常に多いです。

 

そこで古今、読書量を増やすにはどうすればよいかという話はよくされていますが、一番の近道はやはり、「これは!」と波長の合う作者にまず出会って、(それは一人でも十分です)、気に入った一つの作品を手がかりに、同じ作者によって書かれた他の作品を、できる限り片っ端から読んでいくのがいいと思います。(それは深めると言ったほうがいいかもしれません)。

 

そのような流れで、このクラスでは、『ルーファス』の次に、同じ作者の『グレイ・ラビットのおはなし』という作品を紹介しました。

 

(『グレイ・ラビットのおはなし』アリソン・アトリー/作、石井桃子/訳、岩波書店)

 

動物が主人公の物語というのは、それだけで子供には近しいと感じられるものですが、かといってこの作品の筋立ては、時間軸も登場人物の動機も含め、しっかりとしていて、読み応えがあります。おそらく大人が読んでも、その背後に見える人間関係の戯曲として楽しいと思います。

 

また『ルーファス』の時との違いは、主人公であるグレイ・ラビット自身に、より作者の「分身」が認められることです。アトリーはその文才を夫には一切認めてもらえず、いわば自分の内面を否定されながら、それでも家事と育児の合間に細々と書いていたのですが、そのような作者の分身とも言えるこの作品が、中学年から高学年へと、だんだんと葛藤に身を置くことの多くなる生徒自身にとっても、大人の世界を垣間見る窓になればと思います。一方で、このクラスではお話作りをしていますが、書くことは自分を肯定することでもあります。そのような生徒たちを応援したいという気持ちもあり、この作品を通して読めればと思います。

 

内容について色々と書きたいことはあるのですが、これはまた別の機会といたします。