『西洋の児童文学を読む(5~6年クラス)』(授業の進め方と要約の例)

福西です。

4月からいよいよ『王への手紙』(トンケ・ドラフト)の講読が始まります。(現在3名受講)。そこで、授業の進め方の概要をお知らせしておきます。

『王への手紙(上)(下)』(トンケ・ドラフト、西村由美訳、岩波少年文庫)

 

【必要な物事】

・テキスト(線を引いてもよいもの) ※愛蔵したい人はもう一冊買っておいて下さい(^^)

・読書ノート(共感した箇所の抜き書きや、インスピレーション、意見交換を書き残すためのもの)

・二色程度の鉛筆(テキストが痛まない程度に線が引けるもの)

・下記の予習

 

【予習】

毎回、以下のことをして授業に臨んで下さい。(授業時間に取り組んでもいいのですが、それだと意見を出し合う前に終わってしまうので)

必須

・2節分を読んでおく

・話の筋と深く関わるところに線を引く

・まねたい表現や、個人的に共感するところに(別種の)線を引く

・語彙を調べる(講師が授業で「この語はどういう意味か」と質問します)

推奨

・各節で要約を作る(上で31節、下で26節ありますが、それらの要約の付いている読書ノートは、後で読み返すたびにきっと、ますます宝物になると思います)

・特に共感したところをノートに抜き書きする(読書ノートへの書き込み)

・付箋の活用。コメントを書いた付箋を貼る(欄外への書き込みでもいいです)

 

【授業】

1 音読(録音された劇のつもりで)

2 要約(してきた人から)の発表

3 語彙の確認

4 各自の線を引いた箇所をクラスで統合※

5 各自のあらかじめのコメント(付箋)や即興のコメントをクラスで統合※

6 意見交換

※自分は自分、他者は他者で、それぞれ線を引いたところ(一致する箇所あるいは別の箇所)のコメント(付箋)を目にすることで、立体的な「テキスト」を作ります。(ちょうどkindleのハイライトとそのコメントのようなものをイメージしています)

本当に好きな本になってくると、「特別な表現」が左ページにあるか、右ページにあるか、目に浮かんでくるものです。ぜひそんな風に、テキストと深く友達になりましょう!

 

以下は、要約の例です。参考になさってください。

序章 ダホナウト王の騎士たち

ダホナウト王国は強い王と騎士たちによって守られ、政情は安定している。騎士は、王から貸与された土地を治めるか、放浪騎士として方々で任務に就く。

騎士になるためには、まず騎士見習いとなり、経験豊富な騎士に盾持ちとして仕えねばならない。その後一年間、王の兵士として仕え、様々な徳性を身に着けねばならない。最後の試練は、騎士叙任式の前日に二十四時間の祈りを捧げること。その間、飲食、睡眠、会話をしてはならない。

ティウリは十六歳である。

第一章 指令  1 礼拝堂で

騎士見習いティウリは、父のような立派な騎士になることを志している。騎士叙任式を翌朝に控えた、最後の試練の夜。ティウリは同期の少年たちと礼拝堂にこもって務めに徹している。

礼拝堂のドアを叩く音がする。仲間たちは座ったまま沈黙を守っている。ドアを開けてしまえば騎士になる資格を失うからだ。ティウリは疑心暗鬼になる。しばらくしてまた声がする。「神の御名において、ドアを開けよ!」と。

【メモ】 「見る」という動詞が多用されていることが気になった。

・見つめていた
・見る
・直視した
・目を向けた
・目を移した

【語彙】

忠実
高潔
請う

【アンダーライン(まねたい表現)】
緊張感を高める、効果的な繰り返しだと思った。

・そのとき、ドアをたたく音がした(p23)
・もう一度、たたく音がした(同)
・「神の御名において、ドアを開けよ!」(p24)

【アンダーライン(共感した箇所)】

・なんて静かなんだろう……少したってから、ティウリは思った。ぼくの人生で、こんなに静かだったことはない。(p21)

・剣は、よいことのためだけに使うことを許される。(p23)