0614 英語講読カズオ・イシグロ『日の名残り』

尊厳とは何かという話の続きです。

 

それを考える参考に主人公の父親の話が2つ出されます。1つは酔っ払った客人に自分の主人の悪口を言われた際の対応で、もう1つは自分の息子を無駄死にさせた将軍への対応です。息子が死んだのは南アフリカ戦争(ボーア戦争)で、この将軍のように現地の民間人を殺すといった事態が生じ、イギリスの没落を示しているとも言われます。

 

父の姿を通して、尊厳が以下のように定義されます。

 

‘dignity’ has to do crucially with a butler’s ability not to abandon the professional being he inhabits.

 

「『尊厳』は自らが宿している職業的な存在を打ち捨てない執事の能力と決定的に関係している」です。紳士が着るスーツのようなものだとたとえられます。

 

2日目の朝はミスケントンと主人公の父がほぼ同時期にダーリントンホールにやってきたときのことが回想されます。この部分を読んで私はようやく使用人の中での階層が理解できました。footmanやmaidは若手の下級使用人であり、butlerやunder-butler、housekeeperは比較的年長の上級使用人です。父はunder-butlerとして、ミスケントンはhousekeeperとして赴任します。

 

その両者の間にひと悶着あるのですが、それは次回になります。