『将棋道場』イベント便り(2014年2月)

『山びこ通信』2013年度冬学期号より、イベントの記事を転載致します。

月例イベント『将棋道場』 担当:山の学校講師

 最近は、対局を始める前のミニ講座の時間に「足し算の攻め」を伝授しています。例えば、相手側が1枚で守っているところをこちら側が1枚の駒で攻めていっても、いつまでたっても相手のガードを破ることはできません。そういうときは、こちら側の攻め駒をもう1枚増やせばいいのです。2対1の勝負であれば、相手のガードを突破できるはずです。
 下図を見てください。図1では2三の地点を相手の金が守っており、先手側は飛車が2三の地点を狙っています。この状態のままではいつまでたっても2三の地点を破れません。ここで、図2のように▲2六香と打って、攻め駒を1枚増やすことで2三の地点を破ることができるようになります(つぎに手番がまわってくれば、▲2三香成、△同金、▲同飛成と飛車を成り込むことができる)。
shogi_2014_2 そこで相手側も工夫をしてきます。守る側としては、2三の地点にさらに守り駒を増やせばいいのです。そこで図3のように△4一角と打ってきました。これで相手側は2三の地点を△3二金と△4一角の二枚で守っていることになります。すると図3では相手側が二枚の駒で2三の地点を守り、先手側は▲2八飛と▲2六香の二枚の駒で2三の地点を攻めようとしていることになります。この2対2の状態では先手側がこのまま攻めてもうまく2三の地点を破ることはできません(▲2三香成、△同金、▲同飛成、△同角、と最後に飛車を取り返されてしまう)。
 では、どうすればいいのか?
 先手側もさらにもう1枚攻め駒を増やせばいいのです。▲2七香ともう1枚香車を打ってみましょう。これで2三の地点は3対2の力関係になりました。これで次に先手番がくれば、▲2三香成、△同金、▲同香成、△同角、▲同飛成、と最後に飛車が成りこめて大成功です。興味のある人は実際に盤に駒を並べて確認してみてください。
 このような「足し算の攻め」は、将棋の攻めの基本形です。理屈は単純ですが、実際の対局のなかでこれを実現しようとすると意外に難しかったりするものです。とはいえ、この攻めの形を知っているだけで、初心者はライバルに差をつけることができるでしょう。パズル的で頭の体操にもなるはずです。これを読まれている大人の方も、次に将棋を指す機会があればぜひこの「足し算の攻め」を実践してみてください。

(こちらも併せて御覧下さい。→『将棋道場に参加して』2014/2)