『山の学校ゼミ(社会)』クラス便り(2014年2月)

『山びこ通信』2013年度冬学期号より、クラス便りを転載致します。

『山の学校ゼミ(社会)』 担当:中島 啓勝

この授業が開講されてもうすぐ二年になろうとしていますが、嬉しいことに生徒のお一人からのご紹介で、新入会の方が加わることになりました。生徒数はこれで計四名となります。これまでの皆さんももちろん好奇心旺盛な方々でしたが、新年からいらっしゃることとなったこの男性もまた積極的に新しい知識を吸収したいという意欲に満ちた方で、少し予定調和になりがちな面もあった僕たちに早くも新鮮な刺激を与えて下さっています。
僕自身は一応、僭越ながら講師という形で関わらせていただいている訳ですが、生徒は全員人生の先輩ということで、毎週こちらも胸を借りるような気持ちで授業に臨んでいます。とは言え、実際に授業始まってしまえば、年齢差などまるで関係ないかのように自由で気軽でそれでいて真剣な議論が繰り広げられます。手前味噌になってしまいますが、このような出会いと学びの場が持てたということは非常に得難い体験だと思わずにはいられません。
授業内容ですが、前半は前学期に引き続き、新聞・雑誌などからの記事を使いながら昨今のグローバルな政治・経済関連ニュースを紹介しています。僕が少し分析や補足などを加え、その後で他の皆さんとディスカッションを行うという形です。よほど強い関心でもなければつい疎くなってしまいがちな地域の話題を意識的に取り上げるように心がけています。「アラブの春」以降、民主改革が進展すると思われたにもかかわらず、むしろ軍による独裁へと逆行してしまい混迷の度を深めるエジプト。実は再びの債務不履行(デフォルト)さえも現実に起こりかねないほど深刻な経済危機に瀕しているアルゼンチン。近隣外交、特に中東外交において今なお大きな影響力を持つことを示したロシア。「グローバル化」を声高に叫ぶ一方で、どちらかと言えば国内問題や景気問題にばかり注目が集まり海外情勢については正直言ってあまり興味を持たないかのように見える日本。最後は半分冗談ですが、世界で今起こっていることを知れば知るほど、日本に住む我々は内向きな傾向を強めている気がしてしまいます。
授業後半では課題図書の講読を行っていますが、今学期からは生徒の方からの「イギリスの歴史について学んでみたい」というリクエストにお応えして、近藤和彦の『イギリス史10講』(岩波新書)を読んでいます。この本では何とまだブリテン島という島自体が存在しなかったような有史以前の時代から歴史を紐解いて現代のイギリスまでを俯瞰しようという野心的な試みがなされています。アメリカの台頭を許すまで、当時のグローバル化における覇者であった「大英帝国」イギリスの歴史を学ぶことで、現代のグローバル化の性質や問題がより浮かび上がってくるのではないでしょうか。
これからも歴史・文化・思想・哲学などを自由に横断しながら、皆さんと学んでいきたいと思います。