ことば2年

福西です。
2回目は、素話を1時間しました。内容は先週の続きで、ミツバチの話です。

人間とミツバチとのかかわりはたいへん古く、ミツバチは人間にとって役に立つ存在です。そのような虫のことを「益虫」といいますが、今日はミツバチと、その天敵であるスズメバチのお話をします。スズメバチがもし害虫(人間にとってじゃまな存在)であるなら、ぜんぶやっつけて、地球上からいなくすればいいように思います。けれどもそうすると、いったい、どのようなことになってしまうのでしょうか? 今日は、そのことについて、考えてみましょう。(2年生なのでルビは打ってあります)

どれぐらい古いつきあいかというと、一万年前にはすでに下のような、みつばちと人間の壁画が残っているそうです。

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そこで、一万年前というと、一体どれぐらい前なのかを聞いてみました。

1)江戸時代 2)平安時代 3)キリスト誕生 4)マンモス(が絶滅した)頃 5)恐竜時代

そこでまた話が枝分かれして、生徒たちは「ぼく~~知ってるよ!」と口々に自分の知っていることを話してくれました。

さて、ミツバチと言って一番先にイメージするのが「はちみつ」だと思いますが、実は養蜂家にとってはちみつの利益は一割に満たないそうです。実際には、イチゴやメロンやアーモンドなどの受粉のために巣箱ごと貸し出す方が、ずっと儲かるそうです(はちみつを1としたら、レンタル料は10以上だそうです)。そこでHa君が「レンタルカーもそうやな」と言ってくれました。

人間にとって役に立つミツバチですが、昨日はちゃんといたのに、次の朝、巣箱をあけてみると、突然いなくなっている、あるいは巣箱の近くで大量に死んでいる、というショッキングなことが起こっています。どうやらそれは昔から(少なくとも2000年前から)ある現象で、現在の科学力をもってしてもいまだに原因不明だそうです。そう言うと、Yu君がさっそく「よし、ぼくが解明してノーベル賞取ってやろう」と乗ってくれました。

今考えられている原因の一つは、携帯電話などでアンテナが狂わされて、巣に帰れなくなったのではないかという説です。それを言った時、「それってこういうことか!」と、にわかに生徒たちが次々と教室を離れ、教室の中が一人か二人になりました。そしてさみしくなってきたところで、またみんな戻ってきました。そうです。みんなは「ここが教室」とわかっているから戻って来れましたが、ミツバチはなんらかの原因で、それが分からなくなったのではないかということです。

また他の説では、養蜂場の近くでまかれている農薬のせいではないかとか、受粉作業に借り出されるとイチゴならイチゴという一種類の蜜しか集められない単純労働がストレスになっているのではないか、またそれに適応するための突然変異種が優性になって代わりに寿命が短くなったのではないか、などが挙げげられます。

このようにハチは身近な虫であるにもかかわらず、実はほとんど謎に包まれています。ちなみに、ミツバチの8の字ダンスが餌場の方角を仲間に教えるためだと分かったことに、ノーベル賞が授与されました。

ミツバチが突然いなくなることは養蜂家にも大打撃ですが、農家の人も大変困ります。また農家の人だけでなく、ミツバチは案外私たちの生活と直結しています。イチゴも、花粉がついてこそ実がなるわけですが、それがうまくいかないと、下の写真のようになります。スーパーに並んでいるイチゴで、どちらをより買いたいと思うでしょうか。

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おしまいに、ミツバチの天敵であるスズメバチ(日本のオオスズメバチは世界最強)との戦いを映像で見せました。これは一見の価値ありです。(Kちゃんが虫嫌いなのですが、どうやら抵抗なく見てくれていたようでした。しかも一番前で)

1つ目の映像(スズメバチ30匹vs西洋ミツバチ3000匹)

  • http://www.youtube.com/watch?v=6fTrSOFyfxs
  • 2つ目の映像(ミツバチの反撃)

  • http://www.youtube.com/watch?v=LLWZHg_TjA0
  • これを見ると、断然ミツバチを応援する生徒の方が多く、特にKちゃんとMちゃんは弱いものを「がんばれ~」と応援したくなるようでした(Mちゃんはもう一回見たいと言って最後にまた見ていました)。

    中には、「ミツバチも結構ひどいな」とか、Ta君は「スズメバチは害虫のようやけど、ぼくは益虫になることもあると思う」と言っていました。そうなのです。実はスズメバチを全部駆逐してしまうと、スズメバチが人知れず食べていた別の害虫の方がむしろ増えてしまうことになるそうです(それが一体どれぐらいの被害になるのかは私にも分かりませんが)。

    一般にある種を(しかも生態系の上位にいる種を)駆逐した時、その環境には何が起こってもおかしくないと言われています。(特に農薬をまくなどして、人間が人工的合理的に何かの効率を上げようとした時は要注意です。そしてそれをやめることも、人間にとってはなかなか難しいものです。それが人間的だとも言えますが…)

    一方、Yu君が西洋ミツバチと日本ミツバチの二種類があることを知っていたので、そのことも説明しました。一つ目の映像で全滅しているのは西洋ミツバチで、二つ目のスズメバチを倒しているのが日本ミツバチです。日本ミツバチは、スズメバチを取り囲んで熱死させる対抗策を持っていますが、西洋ミツバチにはそれがありません(中にはスズメバチの腹を圧迫して窒息死させるそうですが、攻撃力は熱の方が勝っているようです)。

    面白い話がもう一つあって、西洋ミツバチの方が日本のそれより受粉や蜜集めに適しているため、大量に輸入される傾向があります。すると日本ミツバチが駆逐されてしまう恐れがあります。もしそうなったら、西洋ミツバチの天下なわけですが、しかし西洋ミツバチはスズメバチに対してほとんど無力なので、今度は西洋ミツバチが駆逐されてしまうということが起こります。まるでじゃんけんみたいですね。また、スズメバチを駆逐すると今度は逆に西洋ミツバチが増えすぎて、野生化したミツバチによる被害もあるそうです。

    そうは言っても、私なんかは、どうしてスズメバチが地球上に存在するのか、むしろいなくなってもらった方がいいのではないかと、何度も思いました。けれども色々と調べていると、やはり難しいようです。どうやら地球にとっては種は単一であるよりは多様である方が良いらしく、そうすると、どんなにいやな相手でも、多様性の維持のために(生命全体としての全滅を避けるために)付き合っていくしかないのかもしれません。その際種の間に色々なトラブルが生じますが、それになくすために「根絶やしにすればいい」という単純な解答は出せないようです。