ことば2年

福西です。このクラスでも、はじめて百人一首で『源平合戦』をしました。一度最後まで決着がつくところまでやってみたいと思ったので、最初から机を無しにして、1時間まるまる取り組みました。

<チーム>
東・源氏:H君、Y君、T君
西・平氏:Koちゃん、Mちゃん、N君

以前から、Mちゃんが百人一首をいっぱい覚えているという噂を耳にしていたので、この日はぜひそのことを存分に発揮してもらいたいと思っていました。一方、Y君も私がびっくりするぐらい覚えていました(もちろん山の学校ではまったくしていないのですが…一体どこで覚えたのでしょうか?)。ちょうどその二人がそれぞれ別のチームに分かれているので、これはいい勝負が期待できそうです(^^)

序盤は、源氏側がやや優勢で、特にH君の活躍が目立っていました。H君は、見つけた札を取ることに機敏です。そういえば1年生の頃にもカルタ取りが強かったことを思い出しました。目がいいです。「からくれなひにみすくくるとは」といったかな文字を、ぱっと見るなり判読できているようでした。これはかなりのアドバンテージです。お手つきの確率も低いので、いちいちそれを気にせずに積極的に自分の思う札を叩いていました。それがスピードの出る理由かなと思って見ていました。

ほかにもそれぞれの生徒に、それぞれの頑張り方が見られました。

平氏側のMちゃんは、知っている札があると自分でも追唱しながら札を探してくれます。たとえば「めぐりあいて…」だと「『く』だよ、『く』を探して」とみんなに聞こえるようにアナウンスしていました。すごく気持ちが入っているなと思いました。それをKちゃんがよくフォローして、自陣にたとえばその『く』の札がないと、敵陣に回って、すかさず目を走らせていました。

Kちゃんは一番機動力があったように思います。またKちゃんのような地味な活躍が、ゲームを支えてくれているのを感じます。決してMちゃんみたいにたくさん札は覚えていないけれど、その時の自分にできる精一杯のことをして、チームに貢献してくれていました。それがシブいです。かなりいい味を出してくれていました。みんなそうなのですが、Kちゃんの表情もまた真剣でした。Kちゃんの取った札がなければ、平氏側はもっと早くに負けていただろと思います。

またN君はというと、N君らしいなと思わせられました。百人一首自体が初めてのことなので、プレッシャーを感じたのでしょう。最初は「やらへーん」と言って開始自体を避けようとしていたのですが(誰しもそういうところがあると思います)、ゲームがいったん始まると、協力を惜しまずに取り組んでいました。これはA先生から聞いた話ですが、かずのクラスでも、一筋縄ではいかない問題にぶつかった時、「さいごまであきらめない」とメッセージを横に書き置いて、自身を奮い立たせることがあったそうです。そのN君は、口を結んで、黙って探すのがスタイルです。そして取れた札は、さりげなく立てて見せてくれて、「そう、それです」と言うと、実に嬉しそうに、自分の「手柄」の場所に加えていました。特に目の前の札は、見逃さないようにと頑張っていました。

源氏側のY君も、花の色は…と来ると「小野小町や!」と嬉しそうにしたり、春過ぎて…と来ると、「なつきにけらししろたえの!」というように、有名な札を中心に結構覚えていたので、源氏側を支える頼もしい活躍をしていました。Y君の場合はさらにうんちくがつくこともあって、たとえば「ももしきの…」と来ると、「あ、それは最後の100番の歌や!」と言ったりしていました(^^)よく知っています。

また源氏のT君は、やはりリーダー肌なのですね。この日も、途中自然とできていく歯抜けの陣地を整理して、「島」を作ることをみんなに考案していました。そして仲間が3人いるので、自分たちの島にそれぞれ何があるか、「分割して統治せよ」という作戦に出ていました。枚数が減ってくるとだいぶ覚えやすくなるので、これが、中盤から後半にかけてうまく機能していました。(自陣の札は自由に並べ替えてよいというルールでしていました)。

T君はまた先駆けて、同じ文字ではじまる札を一つの島になるべく集めていました。そして「『や』の札はこっちにはなかったから、あっち。~君はあっち探して!」と指示を飛ばしていました。またその時の仲間内での「勝つための協力」が、なかなかのものでした。T君が「H君、その札こっちにちょうだい」と言うと、H君は、自分の島の札が減るのはあまり嬉しくないはずなのですが、「うん、わかった」と快く応じていました。

さてさて、ゲームの経過です。

<経過その1>
源氏 残り20枚
平氏 残り30枚

さて10枚差です。平氏もこれまで以上に頑張るのですが、その分源氏もまた突き放すので、なかなか間がつまりません。1枚取ったら1枚取り返され…と、みんな頑張るので、お互いにすきのない展開が続きました。

<経過その2>
源氏 残り10枚
平氏 残り20枚

<経過その3>
源氏 残り4枚
平氏 残り10枚

さあ、いよいよラストです。T君が「ぼくらの勝ちかも?」と、勝利宣言を出しかけました。「どっちの陣地の札でも、あと4枚だけ取ったらいいんやからな!」とY君もH君も興奮気味です。Y君はしかも、「先週ぼうずめくりで負けた雪辱をはらすぞ~」と闘志を燃やしていました。

しかし、ここからが「ミラクル」の始まりでした…。

<経過その4>
源氏 残り2枚
平氏 残り6枚

T君の島に連続して2枚出たので、T君が2回とも「はい!」と取りました。これで源氏はあと2枚です。でも倍の勢いで平氏も追いかけてきています。一体何が起こっているのでしょうか?

Mちゃんです! Mちゃんが嬉々として、自陣の札を見渡すなり、こう宣言していたのでした。「わたし、ここにある札『全部』知ってる~!」と。

そうなんです。自陣の札は、上の句の決まり字を読んだ時点で、Mちゃんには分かってしまう状態が、すでに「できあがってしまっている」のでした。そこに、相手から札が送られてくると、KちゃんとN君がすかさず「Mちゃん、これは知ってる?」と心配そうにたずねていました。すると、Mちゃんは「うーん…うん! 知ってる~(笑)」と答えていました。それを聞くなり源氏側は「うわ、あと2枚なのに、やばい!」とうろたえていました。

ここからが、『Mちゃん伝説』の始まりでした(笑)。私の失言でさえ、Mちゃんは聞き逃しませんでした。

「…あ、これはむずかしい字があるなあ…。「ゑ」という「る」みたいな字が…」
「はい!」

ええ~?! まだ歌を読み上げてもいないのに、取ってしまったんですか。一何があったんですか?!
「だって、それって大ヒント~。この中で『ゑ』がでてくるのって、これしかないもの」と。
「もう! 先生、いらんこと言って~!」と源氏側から非難ごうごう。ごめん~!

<経過その5>
源氏 残り2枚
平氏 残り3枚

さて次です。私が上の句を読み上げると、Mちゃんが「自分のところにはないよ」というサインを味方に送りました。するとKちゃんがさっと動いて、すかさずタッチの差で、少なくなった相手陣から1枚召し取りました。(Y君の手がKちゃんの上にありました。惜しい!)。これは大きい一枚です(笑)。

<経過その6>
源氏 残り2枚
平氏 残り2枚

とうとう、並びました…(笑)。源氏側、札が一向に減らせません^^; しかも少なくなっていくということは、平氏側にとってますます有利。Mちゃんが源氏側の2枚も、すでに頭に入れているからです^^

<経過その7>
源氏 残り2枚
平氏 残り1枚

<経過その8>
源氏 残り2枚
平氏 残り0枚!

「終わり!」「やった~」

最後は平家の8連続で、まさかの大逆転。もう笑うしかないです(笑)。ラスト1枚は、やっぱりMちゃんでした。自陣から敵陣に「送った」札の頭文字を覚えていたのだそうです。それで上の句が読まれるなり、すっと敵陣に手が伸びて…気が付いたら、もう勝負がついていたというやつです^^ みんなあっけらかんとして、下の句が虚しく読まれるのを聞いていました。そして、合っていることを確かめました。

というわけで…Mちゃん、Kちゃん、N君、ばんざーい~^^
Y君、T君、H君、ざんね~ん!(これはくやしいです…)

こうして、『源平合戦』というゲームが、いかに高度になればなるほど、最後の一枚を取るのが難しいかということが、よーく分かる一局でした(笑)。ちなみに、帰り際になってMちゃんが「わたし、百人一首覚えていてよかったわ~」と、満足そうに言っていました。良い思い出になってくれたのであれば、何よりです(^^)