山びこ通信(2011/11月号)から、クラスの様子をご紹介します。(以下転載)『経済学入門』(担当:百木 漠)

経済学入門の授業は、秋学期から新たにIさんが生徒として加わりました。その結果、Uさん、Kさん、Iさんの3名プラス僕で授業をしています。議論仲間が増え、授業内容もいっそう盛り上がりをみせています。単発でもよいので、一度参加してみたという方はぜひお気軽にご連絡ください。専門知識がなくても、経済に少しでも興味があれば歓迎です。先日は、昨年度まで山の学校で教えられていた小林さんにゲストに来てもらい、議論が盛り上がりました。この授業は僕が一方的に授業をするというよりは、初めだけ僕が簡単な解説をして、後半は皆で自由にディスカッションをするというスタイルを取っています。実際の経済の動きについては、いつも本を読んで勉強している僕よりも、社会のなかで様々な経験をしてこられた生徒の皆さんのほうがいろいろと有益な知識を持っておられることが多いです。しかも生徒さん3名ともそれぞれに職業や人生経験が異なるので、幅広い意見や情報が聞けて、こちらも非常に勉強になります。

秋学期の授業では、これまでどおり一週間の経済ニュースをチェック&解説しつつ、佐伯啓思『大転換 -脱成長社会へ』(2009年、NTT出版)を輪読しています。佐伯啓思先生は、僕が所属する京都大学人間・環境学研究科の教授で、僕も普段からお世話になっている先生です。この本は、リーマン・ショックの約半年後に出版されたもので、サブプライムローン問題に端を発する金融危機を、80年代以降の新自由主義政策の危機、さらには近代文明の危機として捉える視点から書かれています。狭い意味の経済学に閉じこもらず、政治、社会、文化、思想、哲学などの領域にまで考察の範囲を広げつつ、飽くなき成長を前提とした「経済」のあり方を問い直し、「ポスト成長後の社会」を構想するという内容になっています。生徒さんから「経済学の専門的な知識よりも、幅広く現代の経済をみる視点を身につけたい」というリクエストがあったので、(僕の専門である)経済思想系の本を選んでみました。

最近の世界経済は、急激な円高ドル安の進行、ギリシアの財政危機に伴うユーロ安、震災・原発事故にともなう日本経済のさらなる停滞、などなどの不安定要素が重なって、全体的に停滞モードです。最も成長している中国経済でさえ、インフレの進行、所得格差の拡大などが懸念材料となって、やや成長スピードが落ちてきました。財政危機や高失業率などに悩む先進諸国の間で、リーマン・ショック級の金融危機が再び起こる可能性も否定できないような状況にあります。そのような状況のなかで、改めてサブプライムローン危機が我々に投げかけた問題を考えなおすことは、なかなか意義深いことであるようにも思います。また、この本では経済問題だけでなく、近代文明の技術主義や合理主義にも疑問を投げかけるような内容となっていて、原発事故にまつわる科学技術や専門知識のあり方を問い直す意味でも輪読する価値があると感じました。

今後も生徒さんたちと議論を活発に交わしつつ、これからの日本経済や世界経済のあり方について考えを深めていければと思っています。

(百木 漠)

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