ことば4・5年

福西です。
今年2回目の授業では、最初にぼうずめくりをしてから、次に『青冠(あおかんむり)』という新しいゲームを紹介しました。(この日は残念ながらEちゃんがお休みでした)

その前に、先週出しておいた「一首覚えてくること」という宿題を、生徒達の方から「覚えてきたよ!」と言ってくれたので、それを発表してもらいました。ちょっとどきどきしながらも、ちゃんと言うことができたので、すごいなと感心しました。

Aちゃん:大江山 いく野の道の遠ければ まだ文も見ず 天のはしだて
Mちゃん:巡りあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな
H君:歎けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
(Eちゃんは「君がため・・・」を選んでいました)

Aちゃんは、おばあちゃんから大江山の歌を教えてもらったそうです。Mちゃんの歌は紫式部で、ぼうずめくりでも読んでいて、「わあ、すごい偶然!」と喜んでいました。H君の歌は西行法師で、男の子らしい渋い選択だなと思いました。

   *

さて、『あおかんむり』のルールですが、これはやってみてその面白さがわかるので、ここで説明する自信がないのですが…。でもやってみます。

これは、札の絵が色々あることを使う遊びで、その種類は以下の通りです。

あおかんむり 天智天皇と同じ青いぼうしをかぶっています。
たてえぼし  たてに長いぼうし。
よこえぼし  よこになったぼうし。
やごろう   矢を持っています。
ぼうず    言わずと知れた、ハゲちゃびんです。赤ずきんもふくめます。
ひめ     かみが長い女の人です。
持統天皇   このゲームのクイーンです。天智天皇以外の札に勝てます。
天智天皇   キング。このゲームで最強のカード。どの札にも勝てます。

持統天皇と天智天皇は1枚ずつしかなく、いまいち「それが最強」と言われてもピンとこないのですが、このたった2枚が実は「非常に」ゲームを左右します。あとの札は、イメージ的には、絵柄をあわせる「ばばぬき」の役割です。

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(持統天皇と天智天皇。「えー、女の人が天皇なの?」とMちゃん。そうなんです)

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(上からZ字の順に、青冠、矢五郎、たて烏帽子、よこ烏帽子です。残念ながら、任天堂の札では、冠は「青く」ありませんでした…^^; なので、普通に「かんむり」と呼ぶことにします。)

以下が、ゲーム進行のルールです。

・まず、ペアを二組決めます。
・ペアは、向かい合わせに座ります。(絶対)
・百枚の札を四人にすべて(25枚ずつ)配ります。
・さいしょの人を決め、その人が右どなりの人にたいして一枚出します(せめふだ)。
・出された人は、同じ絵がらか、持統天皇、天智天皇のふだを出して受けます(うけふだ)。
・天智天皇はどの札も受けられず、持統天皇は天智天皇のみで受けられます。
・受けることができたら、こんどは受けた人の番です。右どなりに一枚、手ふだから出せます(せめふだ)。
・受けられないか、パスをしたら、右の人に順番がうつります。(つまり相手ペアの番となります)
この手順をつづけ、さいしょに手札をなくした人のいるペアが勝ちです。

いわば、百人一首版「ばばぬき」です。絵札をあわせながら札がなくなることが目的で、その時、持統天皇と天智天皇がワイルドカードです。さらに、1年生にはちょっと難しいと思えるルールが(なので4・5年生クラスでしました)、自分とペアのどちらか一方が上がれば、そのペアの勝ち、というのが、重要です。つまり「ペアを勝たせる」作戦がかなり有効で、その時、持統天皇と天智天皇が絶大な効果を発揮します。(トランプでも『ナポレオン』というゲームがありますが、それに似ています)

          *

さてゲーム開始です。ペアは、女の子チームと、男の子チームに分かれました。「Aちゃん&Mちゃん」vs「H君&私」です(きっとそうなるだろうなとは予想していましたが・・・^^)。

1回戦は、男の子チームが「天智天皇」を先に使ってしまったのが敗因で、女の子チームが普通に札を捨てることで勝ちました。Mちゃんが「これ、面白いかも~」と言ってくれたので2回戦目もしました。男の子チームにとってはリベンジです。

2回戦は、お互いコツがわかってきて、より接戦になりました。

さて、ゲーム中に私が気付いたことは、持ち札を切る時、種類のバランスをとることの「よしあし」でした。つまり、逆にバランスを崩した方が有利なこともあるのでは? ということなのです。

たとえば、自分の持ち札で「冠」が一番多い札だとします。そういう札はおそらく最初のうちにさっさと使って、半分ほど切ったら、もう半分は手元に残してバランスを取ろうとするのが普通です。それは、攻められたときに受けられるようにです。けれども、逆に考えることもできます。

つまり、自分がたくさん持っていたということは、相手は、もし持っていても、少ししかないということです。ということは、自分がもし一番多い冠を使い切ったとしても、それで全体としても冠は打ち止めかもしれず、また残っていたとしても、相手がその希少価値を考えて、冠を手元に置きたがるかもしれません。そうすると、こちらが冠を出せば出すほど、なおさら攻められる可能性は低くなります。よって、「冠」をじっと持っていて、相手の持ち札の状況が分かってきたころに、一気に放出するという手も考えられるはずです。

この作戦を実行してみたところ、かなりいい線まで行きました。私は「冠攻撃」と称して、6連続ほど冠を出しました。私の右隣のプレイヤーはAちゃんで、Aちゃんが「冠」を受け札として出さなければならないのですが、Aちゃんは案の定、冠を持っていませんでした(天智天皇も持っていたのですが、それを使うはずがありません。使わせようと揺さぶりをかけたのですが)。それで、その都度Aちゃんはパスしなければならず、無条件にH君に番が回りました。こうして番が転がり込んできたH君は、好きな札を出せるというわけです。(手札を確実に減らせるので、H君が上がりやすくなります。これが私の狙いでした)

一方で、Aちゃんは坊主をいくつか持っていて、H君が坊主がないことを知っていたので、私の冠攻撃は、AちゃんのH君への坊主攻撃を防ぐという側面もありました。攻撃するのとされるのとでは、ここでだいぶ差が開きます。

こうしてH君と私のペアが、若干ですが、有利に手札を減らしていきました。でも、常に気になるのは、「持統天皇と天智天皇」がまだ出ていないことでした。つまり、MちゃんとAちゃんが(女の子チームがどちらも!)持っていたのです。しかもそれを最後まで…。その最後の状況を図で示すと…。

<2回戦、最後の状況>

  Mちゃん:札=持統天皇+坊主2枚

Ryoma:札=坊主  H君:札=2枚

  Aちゃん:札=札=天智天皇

さて手番は、Mちゃんでした。Mちゃんがもし坊主を捨てていれば、私の上がりだったのですが…。でも、Aちゃんが「ちょっと、作戦タイム!」とストップをかけました。

そうなのです。Mちゃんが、持統天皇を出せば、自動的に私は「パス」しなければならず、するとAちゃんに手番が渡ってしまうことを、AちゃんはMちゃんに説明したのです。Aちゃんは残り1枚です。ということは、それを捨てられれば上がりです。(Mちゃんは、Aちゃんが上がれば「チームとして」同じ勝ちなのです)でも、その前に私が上がれば、男の子チームの勝ちです。ここは、Mちゃんとしては、もう持統天皇を固守する必要はないわけなのです。ということで…

「はい、持統天皇!」
「…うう、パス」
「天智天皇で、はい上がり!」
「やった~!」「私らの勝ち~!」「天智天皇でなくても余裕で上がれたよ~」
という女の子チームの歓声が、授業の終わり時間にまた響きました、というのがこの日のオチでした^^;(ガクッ)