Tacitum vivit sub pectore vulnus.

2013年6月8日

「タキトゥム・ウィーウィト・スブ・ペクトレ・ウルヌス」と読みます。
「静かな、沈黙している」を意味する tacitum は vulnus にかかる第1・第2変化形容詞 tacitus の単数・中性・主格です。
vivit は「生きる」を意味する第3変化動詞 vivo の直説法・現在・能動相、3人称・単数です。主語は vulnus です。
sub は「~の下で」を意味する前置詞で奪格を支配します。
pectore は「胸」を意味する第3変化名詞 pectus の中性・単数・奪格です。
vulnus は「傷」を意味する第3変化名詞です。
「静かな傷は胸の下で生きる。」という意味になりますが、tacitum を副詞的に訳し、「傷は静かに胸の下で生きる。」と訳してもよいです。
出典はウェルギリウスの『アエネーイス』4巻67行です。恋に苦しむカルタゴの女王ディードーの懊悩(傷と表現されています)を表現した箇所です。
田中・落合訳では「傷は黙りて(隠れて)胸裡に生く。」(『引用語辞典』岩波書店)、泉井訳では「胸中ふかく音もなく、かくれて傷は生きている。」(『アエネーイス』岩波文庫)、岡・高橋訳では「もの言わぬ傷が胸の中に息づいている。」(『アエネーイス』京大学術出版会)、小林訳では「胸の奥、傷は静かに息をしている。」(『ローマが残した永遠の言葉』NHK出版)となっています。

アエネーイス (西洋古典叢書)
ウェルギリウス 岡 道男
4876981264