「明日はどこに?」~マルティアーリスの『エピグランマタ』(5.58)

2019年11月4日

「明日はどこに?」~マルティアーリスの『エピグランマタ』(5.58)
Crās tē uictūrum, crās dīcis, Postume, semper:  1
dīc mihi, crās istud, Postume, quando uenit?  2
Quam longē crās istud! ubi est? aut unde petendum?  3
Numquid apud Parthōs Armeniōsque latet?  4
Iam crās istud habet Priamī uel Nestoris annōs. 5
Crās istud quantī, dīc mihi, possit emī?  6
Crās uīuēs? Hodiē iam uīuere, Postume, sērum est:  7
ille sapit quisquis, Postume, uīxit herī.  8

<韻律:エレゲイア>
Crās tē | uictū | rum, crās | dīcis, | Postume, |semper:
dīc mihi, | crās is | tud, | Postume, | quando ue | nit?
Quam lon | gē crās | istud! u | b(i) est? au | t unde pe | tendum?
Numquid a | pud Par | thōs | Armeni | ōsque la | tet? 
Iam crās | istud ha | bet Pria | mī uel | Nestori | s annōs. 5
Crās is | tud quan | tī, | dīc mihi, | possit e | mī?
Crās uī | uēs? Hodi | ē iam | uīuere, | Postume, | sēr(um) est:
ille sa | pit quis | quis, | Postume, | uīxit he | rī.
・奇数行→ ―VV | ―VV | ―VV | ―VV | ―VV | ―VV
・偶数行→ ―VV | ―VV | ― | ―VV | ―VV | ―
・―(長音節)とVV(短音節×2)は等しい。

<語釈と逐語訳>
Crās tē uictūrum, crās dīcis, Postume, semper:  1
crās: 「明日」(副詞)。uictūrum (esse)にかかる。
tē: 2人称単数の人称代名詞、対格。victūrum esseの意味上の主語(「対格不定法」)。
uictūrum=victūrum: vīvō,-ere(生きる)の未来分詞。省略されたesseとともにvīvōの不定法・未来を作る。 「おまえが(tē)生きるだろうことを(uictūrum esse)」。dīcisの目的句。
crās: 「明日」(副詞)。繰り返しによる強調。dīcisにかかるのでなくuictūrum (esse)にかける。
dīcis: dīcō,-ere(言う)の直説法・能動態・現在、2人称単数。不定法句を目的語に取る。主語は「おまえ」、すなわちポストゥムス。
Postume: Postumus,-ī m.(ポストゥムス)の単数・呼格。第2変化男性名詞の単数・呼格は-eで終わる。
semper: 「いつも」(副詞)。dīcisにかかる。

<逐語訳>
明日(Crās)おまえは(tē)生きるだろうことを(uictūtum )、ポストゥムスよ、(Postume)、明日は(crās)(生きるだろう)といつも(semper)おまえは言う(dīcis)。

dīc mihi, crās istud, Postume, quando uenit?  2
dīc: dīcō,-ere(言う)の命令法・能動態・現在、2人称単数。dīcの間接目的語。quandoの導く間接疑問文を目的文にとる。
mihi: 1人称単数の人称代名詞、与格。「私に(mihi)言ってくれ(dīc)」。
crās: ここでは「明日」という中性の単数名詞として使われている。quandoの導く間接疑問文の主語。
istud: 2人称にかかわる指示代名詞iste,ista,istud(それ、その)の中性・単数・主格。crāsにかかる。「(おまえの言う)その『明日』は」。 
Postume: Postumus,-ī m.(ポストゥムス)の単数・呼格。
quando: 「いつ(疑問副詞)」。間接疑問文を導く。
uenit=venit: veniō,-īre(来る)の直説法・能動態・現在、3人称単数。quandoの導く間接疑問文における動詞。文法の基本では接続法になるが、ここでは直説法が用いられている。その点を考慮に入れて、この一文には2つの直接疑問文があるとみなすことも可能(逐語訳参照)。

<逐語訳>
私に(mihi)言ってくれ(dīc)。おまえのその(istud)明日は(crās)、ポストゥムスよ(Postume)、いつ(quando)訪れるのだ(uenit)。

Quam longē crās istud! ubi est? aut unde petendum?  3
Quam: 「いかに」(疑問副詞)。直接疑問文を導く。
longē: 「長く」(副詞)。quam longēは英語のhow longに相当。「どれくらい長くかかって(おまえの「明日」はやってくるんだ)」。動詞venitを補って理解する。
crās: ここでは「明日」を意味する中性・単数名詞(主格)として用いられている。
istud: 指示代名詞iste,ista,istud(それ、その)の忠誠・単数・主格。crāsにかかる。
ubi: 「どこに」(疑問副詞)。直接疑問文を導く。
est: 不規則動詞sum,esse(いる、ある)の直説法・現在、3人称単数。crāsが主語。
aut: または、あるいは
unde: 「どこに、どこから」(疑問副詞)。直接疑問文を導く。
petendum:  petō,-ere(求める)の動形容詞、中性・単数・主格。crās istudと同格(性・数・格が一致)。「求められるべき」(求めるべき)。estを補って理解する。「それはどこに(unde)求められるべき(petendum)であるか(est)」。

<逐語訳>
どれくらい(Quam)長くかかって(longē)おまえのその(istud)明日は(crās)(やってくるんだ)。それはどこに(ubi)いるのか(est)。あるいは(aut)それはどこに(unde)求められるべき(petendum)であるか(est)。

Numquid apud Parthōs Armeniōsque latet?  4
Numquid: (否定の答えを予想する疑問文を導き)「~ではないだろうね」。
apud: 「<対格>の間で」。
Parthōs: Parthī,-ōrum m.pl.(パルティア人)の複数・対格。
Armeniōsque: ArmeniōsはArmenī,-ōrum m.pl.(アルメニア人) の複数・対格。-queは「そして」。ParthōsとArmeniōsをつなぐ。「パルティア人(Parthōs)と(-que)アルメニア人(Armeniōs)の間で(apud)」。
latet: lateō,-ēre(隠れる)の直説法・能動態・現在、3人称単数。主語はcrās istud(おまえの「明日」)。

<逐語訳>
まさか、パルティア人(Parthōs)と(-que)アルメニア人(Armeniōs)の間に(apud)隠れている(latet)のではないだろうね(Numquid)。

Iam crās istud habet Priamī uel Nestoris annōs. 5
Iam=Jam: 今、すでに(副詞) 
crās: 「明日」。名詞化された副詞。中性・単数・主格として用いられている。
istud: 指示代名詞iste,ista,istud(それ、その)の中性・単数・主格。crāsにかかる。
habet: habeō,-ēre(持つ)の直説法・能動態・現在、3人称単数。主語はcrās(「明日」)。
Priamī: Priamus,-ī m.(プリアムス)の単数・属格。プリアムスはトロイヤ王。annōsにかかる。
uel=vel: あるいは 
Nestoris: Nestor,-oris m.(ネストル)の単数・属格。ネストルはピュロス王。annōsにかかる。
annōs: annus,-ī m.(年齢)の複数・対格。habetの目的語。

<逐語訳>
今(Iam)おまえのその(istud)明日は(crās)プリアムスの(Priamī)あるいは(uel)ネストルの(Nestoris)年齢を(annōs)持っている(habet)。

Crās istud quantī, dīc mihi, possit emī?  6
Crās: 「明日」。名詞化された副詞。中性・単数・対格として用いられている。不定法emīの意味上の主語。
istud: 指示代名詞iste,ista,istud(それ、その)の中性・単数・対格。Crāsにかかる。
quantī: 疑問代名詞quis,quis,quid(誰が、何が)の中性・単数・属格(「価値の属格」)。「いくらで」、「どれだけの値段で?」 
dīc: dīcō,-ere(言う)の命令法・能動態・現在、2人称単数。
mihi: 1人称単数の人称代名詞、与格。「私に」。
possit: 不規則動詞possum,posse(<不定法>が可能である)の接続法・能動態・現在、3人称単数。間接疑問文で用いられる接続法。emīを補語にとる。
emī: emō,-ere(買う)の不定法・受動態・現在。意味上の主語はCrās。「おまえのその(istud)「明日」は(Crās)いくらで(quantī)買われることが(emī)可能であるか(possit)」。

<逐語訳>
おまえのその(istud)明日は(Crās)いくらで(quantī)買われることが(emī)可能であるか(possit)、私に(mihi)言ってくれ(dīc)。

Crās uīuēs? Hodiē iam uīuere, Postume, sērum est:  7
Crās: 「明日」(副詞)。uīuēsにかかる。
uīuēs=vīvēs: vīvō,-ere(生きる)の直説法・能動態・未来、2人称単数。
Hodiē: 「今日」(副詞) 
iam=jam: 「今、すでに」(副詞)。uīuereにかけるかsērumにかけるか。前者なら「今」、後者なら「すでに」。
uīuere=vīvere: vīvō,-ere(生きる)の不定法・能動態・現在。文の主語。
Postume: Postumus,-ī m.(ポストゥムス)の単数・呼格。
sērum: 第1・第2変化形容詞sērus,-a,-um(遅い)の中性・単数・主格。
est: 不規則動詞sum,esse(である)の直説法・現在、3人称単数。

<逐語訳>
明日(Crās)(おまえは)生きるつもりだと(uīuēs)?ポストゥムスよ(Postume)、今日(Hodiē)今(iam)生きることは(uīuere)遅い(sērum)のである(est)。

ille sapit quisquis, Postume, uīxit herī.  8
ille: 指示代名詞ille,illa,illud(あれ、あの)の男性・単数・主格。quisquisの先行詞。
sapit: sapiō,-ere(賢明である、分別がある)の直説法・能動態・現在、3人称単数。 
quisquis: 関係代名詞quisquis,quaequae,quodquod(~する者は誰でも、~するものはなんでも)の男性・単数・主格。先行詞はille。
Postume: Postumus,-ī m.(ポストゥムス)の単数・呼格。
uīxit=vīxit: vīvō,-ere(生きる)の直説法・能動態・完了、3人称単数。
herī: 「昨日」(副詞)。uīxitにかかる。

<逐語訳>
ポストゥムスよ(Postume)、昨日(herī)生きた(uīxit)者は誰でも(quisquis)、その者が(ille)賢明なのである(sapit)。