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ノーベル賞のメダルには次のラテン語が刻まれています。

Inventas vitam juvat excoluisse per artes
「見出された(inventās)技術を(artēs)通じて(per)<人間の>生活を(vītam)高めたことが(excoluisse)喜びとなる(juvat)」。

これはウェルギリウスの『アエネーイス』第6巻の表現をアレンジしたものです。

inventās aut quī vītam excoluēre per artīs Verg.A.6.663
あるいは(aut)見出された技術を通じて<人間の>生活を高めた者たち。

ノーベル賞のメダルのラテン語について補足すると、述語動詞はjuvatで、非人称的に使われています。不定法の内容が「喜びを与える」、「喜びとなる」という意味です。

誰に、または、誰にとって喜びとなるのかは明示されていません(明示される場合は与格が用いられます)。受賞した本人だけでなく、人類全体にとって、という含みがあるのでしょう。

一方、ノーベル平和賞には次のラテン語の刻印があるようです。

Pro pace et fraternitate gentium
諸民族の(gentium)平和(pāce)と(et)兄弟愛(frāternitāte)のために(Prō)

gentiumはgensの複数・属格でpāceとfraternitateにかかります。pāceにかけず、frāternitāteのみにかけるという考え方も可能です。gensをどう訳すか、難しい気がします。ノーベル財団HPの英訳を見ると”For the peace and brotherhood of men“となっています。日本語訳は「人類」や「全世界」でもよいかもしれません。参考まで、gens,gentis f.を『羅和辞典』(研究社)で引いた結果を紹介しておきます。

  1. 氏族《同一の祖先・氏族名を有する数家族の集団》.
  2. 全世界
  3. 種類.
  4. 血統;子孫.
  5. 民族, 国民.
  6. 地域, 国土.
  7. (pl)外国;外国人.

なおこちらのラテン語(Pro pace…)については出典は不明です。ノーベル賞の制度ができたあとで作られたラテン語という感じがします。

今回のようにちょっとラテン語の単語を調べたいとき、手許に「羅和辞典」が一冊あると便利です。