ゼウスの時代:ヘーシオドス

ヘシオドスの「神統記」(テオゴニア)によれば、はじめにカオス(混沌)が生まれ、カオスからガイア(大地)、大地の奥底のタルタロス、エロス(愛)が誕生します。ガイアからはウラノス(天)とポントス(大洋)が生まれたとされます。

ガイアは息子ウラノスと交わって(「聖婚」)、ティタン族、ヘカトンケイル(百手巨人)、キュクロプス(一眼巨人)を産みます。ウラノスはヘカトンケイル、キュクロプスを憎み、生まれる片端からみな大地の奥(タルタロス)に隠しました。

ガイアはこれに腹を立て、子供たち(ティタン族)に復讐を行なうよう促します。母から大鎌を受け取ったクロノス(ローマ神話のサトゥルヌス)は、父ウラノスの生殖器を切り落とし、支配権を奪いました。

ところがクロノス自身、自分も息子によって将来滅ぼされる定めであると、両親(ウラノスとガイア)から聞いていました。それゆえ、妻レイアとの間に生まれた子供たち(オリュンポスの神族)、すなわちヘスティア、デメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドンを次々にのみ込んでしまいました。

子を奪われて悲しむレイアは、末っ子のゼウスを出産する際、両親(ウラノスとガイア)に智恵を授けてもらいました。どうしたら(クロノスに)知られずに子供(ゼウス)を産むことができるのか、また彼女自身、自分の父親(ウラノス)の恨みと、クロノスがのみ込んだ子供たちの恨みをどうやれば晴らすことができるのか、と。

両親は彼女をクレタに送りました。そして、生まれた子(ゼウス)をガイア(大地)は腕に抱き、洞窟の中に隠しました。ガイアはさらに大きな石に産着をつけて、それをクロノスに与えたのです。クロノスは自分の子供であるとだまされて、それを手でつかみ取ると、腹の中に詰め込みました。その結果、クロノスは今までのみ込んだ子供をすべてはきだしました。ゼウスは兄弟を救出したわけです。

こうしてゼウスは兄弟の神々とともに、ティタン神に戦いを挑み、その争いはまる十年にも及びました。「辛い争いはいつ果てるとも知れず、またどちらの側にも決着はつかず、戦さの成り行きは等しく釣合のとれたままであった。」とヘシオドスは述べています。

このとき、ガイアは、タルタロスに幽閉されたものたちを味方につければ、神々は勝利を得ることができるだろうと述べ、彼女の勧めで、ゼウスとその兄弟は、タルタロスに閉じこめられたブリアレオス、コットス、ギュゲスといったヘカトンケイルたち(百手巨人)を解放し、ついに勝利を得たのです。ちなみに、ゼウスがヘカトンケイルから雷電を授かったのもこのときのことです。

上記のエピソードについて、アポロドロス(『ギリシア神話』、高津春繁訳)は次のように記述しています。

「ゼウスが成年に達するやオーケアノスの娘メーティス(=「智」)を協力者とした。彼女はクロノスに薬を呑むように与えた。薬の力で彼は先ず石を、ついで呑み込んだ子供らを吐き出した。彼らとともにゼウスはクロノスとティーターンたちと戦さを交えた。十年の戦闘の後大地(ゲー)はゼウスにタルタロスに投げ込まれた者たちを味方にしたならば勝利を得るであろうと予言した。彼は彼らの番をしているカムペーを殺してその縛を解いた。そこでキュクロープスたちはゼウスには雷光と雷霆(らいてい)を、プルートーンには帽子を、ポセイドーンには三叉(さんさ)の戟(ほこ)を与えた。神々はこれらの武具に身をよろい、ティーターン族を征服してタルタロスに幽閉し、百手巨人どもを牢番とした。しかし彼ら自身は支配権に関して籤(くじ)をひき、ゼウスは天空を、ポセイドーンは海洋を、プルートーンは冥府の支配権の割り当てを得た。」