「ホモー・ホミニー・ルプス」と読みます。
homoは、「人間」を意味する第3変化名詞 homo,-minis c.の単数・主格。hominiは、同じ名詞の単数・与格です。
lupusは「狼」を意味する第2変化名詞 lupus,-i m.の単数・主格です。
動詞 est が省略されています。
「人間は、人間にとって、狼である。」という意味になります。
原文には、Lupus est homo homini.の語順で出てきますが、一般には表題の形で知られます。
ローマの喜劇作家プラウトゥスの『ろば物語』に出てくる言葉です(Asin.495)。

ローマ喜劇集 (1) (西洋古典叢書) プラウトゥス 木村 健治

余談

表題の言葉は「人を見たら泥棒と思え」と同じニュアンスで用いられています。同じく喜劇作家カエキリウスの断片に、「人間は人間にとって神。もしも義務を知るならば」という言葉が残ります。断片なのでこれ以上はわかりませんが、「義務を知らなければ狼」という含みが感じられるので、基本は人間不信の言葉なのかもしれません。

人間社会はしょせん弱肉強食の世界だと言う人がいます。そう割り切るとき、タイトルの言葉はこの立場の人たちの心情を代弁します。しかし、人間関係をめぐるすべての営みを戦いとみなすことには抵抗があります。とりわけ、自分の身の回りの家族や友人の顔を思い浮かべるときには。ただし、カエキリウスが述べたように、人として義務を果たさなければ、身近な人間関係の中にさえ信頼を築くことはできない。これは確かなことでしょう。

義務というと大げさですが、親は心を込めて子を育て、子は親の恩に報いるよう努力する。友人同士は助けあって信頼を築いていく。困った人がいたら助けてあげる。そういう当たり前のことを指します。人と人が当たり前のこと(義務)を安々とやってのけるとき、人間は人間にとって狼とは言えないでしょう。