Ne sis miser ante tempus.

2013年7月31日

「ネー・シース・ミセル・アンテ・テンプス」と読みます。
ne は接続法を伴い、「・・・するな」という禁止の意味を表します。
sis はsum の接続法・現在、二人称単数です。
miser は「惨めな、あわれな」を意味する第一・第二変化形容詞、男性単数主格です。
sis で想定される二人称単数主格(「あなたは」のこと)を miser は修飾する補語となります。
ante は「・・・より前に」を意味する前置詞で、対格を支配します。
tempus は「時、時期」を意味する第三変化中性名詞、単数対格です。
ante tempus で「時が至るよりも前に」という副詞句を作ります。
「そのときが来るよりも先に惨めな気持ちになるな」と訳せます。
直訳すると回りくどくなりますが、いわんとすることは、「先走りして苦労するな」、「取り越し苦労はするな」ということです。
セネカの『倫理書簡集』に見られる表現です(Ep.13.4)。
人間は動物と違い、先のことが見通せる代わりに、訪れるかどうかも不確かな未来の出来事を先に心配する欠点をもつ、という趣旨のことをセネカは指摘しています。

セネカ哲学全集〈5〉倫理書簡集 I
兼利 琢也
4000926357