心のバランス:キケロー

2011年6月11日

タイトルは equal の語源、aequabilis の名詞形で平衡と訳されます。日常生活を送っていると、「バランス」という言葉の大事さを痛切に感じるときがあります。言い過ぎてもだめ、言わなくてもだめといった具合に。この言葉を使ったキケローの表現をご紹介します。

Praeclara est aequabilitas in omni vita et idem semper vultus eademque frons. 人生を通じて心のバランスを保つことは素晴らしい。いつも変わらぬ表情と顔つきをしていられることもまた素晴らしい。Cic. De Officiis, 2.32

「心のバランス」と言えば、ホラーティウスの”aurea mediocritas” (黄金の中庸)を思い出します。

ホラーティウスは、逃れられない死の定めについて、また人生の無常について、繰り返し詩の中で語っています。権力や富への過度の欲望にとらわれるべきでないこと、今ある質素な暮らしに満足し、「今日この日を楽しめ」と歌います。「カルペ・ディエム」の詩でも有名です。

同じ趣旨の言葉として「真ん中を行くのが最も安全」(Medio tutissimus ibis.)という格言があります。元はオウィディウスの言葉です。「あなたは真ん中の道をもっとも安全に行くでしょう」という意味です。一般には中庸を旨とするのがもっとも確かである、という意味で理解されます。

しかし、元々は『変身物語』に由来するもので、太陽神が息子パエトンに太陽の馬車を操縦することを許した際の忠告の言葉となっています。父は、馬車を操縦するときは高すぎず低すぎず、中間を行くのがもっとも安全である、と息子に語りましたが、この忠告もむなしく、パエトンは操縦を誤り命を落とすのでした。

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キケロー 中務 哲郎
4000922599