「おやまの絵本通信」へもどる
『かんがるーぽけっと』

幼稚園で出会うキラキラしたお顔の子どもたち。私がその子どもたちと同じ年の頃、何を思い、何を感じ、何にワクワクしていたのかはっきりと思い出せたのならどんなに素晴らしいことかといつも思います。

絵本も同じで、父や母に数えきれないほどたくさんの絵本を読んでもらったのに記憶に残っているのは残念ながら、ほんの数冊。子どもの頃にワクワクしながら楽しみに聞いていた記憶を今、感じられたら……と思います。

幸いなことに私の母は子どもに何度も読んで聞かせた「思い出の絵本」として兄の時も私の時も妹の時もしっかりと記憶に残っているようで、母から絵本の題名を聞くたびに、

「ああ、そういえばワクワクして聞いていたなあ。」

と懐かしく思いました。

そんな母の話を聞いて押入れのほこりをかぶったダンボールの中から見つけ出した数冊の絵本の中の『かんがるーぽけっと』という絵本をご紹介したいと思います。


……ある日、なっちゃんはかんがるーみたいな大きなポケットが欲しくなりました。なっちゃんはお母さんにお願いしてワンピースに大きなポケットをつけてもらいます。
早速、色紙を切ってポケットに入れる、かんがるーの赤ちゃんを作り始めます。顔、体、手、足を作ってポケットに入れて……。


              「はねる はねる かんがるー。 
              はねる はねる るん るん るん。
              わたしは かあさんかんがるー」


ところが、ポケットから飛び出したのはことりさんでした。
耳を作り忘れていたなっちゃんは、今度はちゃんと耳をつけて、また、野原を飛び跳ねます。ところが今度ポケットから飛び出したのはうさぎくんでした。しっぽを忘れていたのです。

最後にきちんとしっぽをつけて、今度こそかんがるーの赤ちゃんと、ことりさんと、うさぎくんと、なっちゃんと野原を飛び跳ねます。

いっぱい、いっぱい飛び跳ねたみんなは、最後に疲れて野原でお昼寝をします……。


淡い色で描かれた優しいタッチの絵と、何回も出てくる「はねる はねる かんがるー。はねる はねる るん るん るん。わたしはかあさんかんがるー」という言葉がとても印象に残っており、幼い頃の私はこの絵本を読んでぴょんぴょん飛びまわっていたようです。

暖かい春の日に、お外で読んであげたくなる絵本、心がぽかぽかあったかーくなる絵本です。

「わたしは かあさんかんがるー」
――いわむらかずお/文・絵、偕成社1975年
文章 まみ先生