『ぞうがめくん』
高橋ひろ子/文、小黒三郎/絵、美巧社2018年
我が家には15年飼育しているカメがいます。この絵本のようなゾウガメではありませんが、息子が当時下校中、道端で見つけ拾ってきて飼い始めることになりました。はじめは500円玉ほどの大きさだったカメですが、今では両手の平からはみ出るほどの大きさに成長しています。そんなカメに縁のある私ですが、先日、幼稚園の本棚で、『ぞうがめくん』の名前に相応しい大きな横幅の長いこの絵本を見つけ、今回ご紹介させていただくことになりました。
このお話の主人公はぞうがめで、「だれかになにかをたのまれて「いやだよ」とか「だめだよ」とかいったことがありません。」(本文より)
そんなぞうがめが、散歩の途中で困っている虫や動物に出会い、自分の背中に乗せて歩いてあげるお話です。
このお話を読んでわたしは父を思い出しました。断ることを知らないかのようにどんどん用事を引き受けてくる父、それを一番に応援し手伝いながらも時にはたしなめ、断るのが母の役目でした。
このぞうがめは、最初はお安いご用と思っていた、背中に乗せて歩いてあげるという行為が徐々にその重さのために辛くなってきます。しかしただただ乗せて歩いてあげるのです。
皆さんの長い人生にもこのぞうがめくんのようなことが起こるかもしれません。このぞうがめに対して、乗せてと頼んでくる動物たちに対して子どもたちは色々な考え方をするでしょう。
人生には自分から探しに行く出会いもあれば、偶然の出会いもあり、偶然だと感じていてもそれはなるべくしてなったのかもしれないと感じる出会いもあります。出会いで人生は彩られていきます。
このお話の最後には大きなぞうがやってきます。ぞうは辛くなったこのぞうがめを自分の背中に乗せて歩きます。そしてぞうがめはいつの間にか眠ってしまいます。ぞうがめはどんな夢を見ているのでしょう。
我々人間にとって、私達ひとりひとりにとって、この大きなぞうは一体何を意味するのでしょうか。
これから子どもたちは人間社会の中で生きて、常に自分で考え選択し前進していくのですが、この絵本の中のぞうがめくんはシンプルでありながら私達に生き方を問いかけていると思います。是非手にとって読んでみてください。
文章/Yoshie先生