お山の絵本通信vol.197

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『おおきな きがほしい』

佐藤さとる/文、村上勉/絵、偕成社1971年

この絵本は、主人公かおるの空想でできたお話です。誰でも一度はかおると同じ夢を抱いたことがあるのではないでしょうか。

この絵本を読んで、子ども達がひみつの森で夢中になって遊んでいる姿が思い浮かびました。

大きな木が欲しいかおると一緒に木を登っていくように、ワクワクドキドキしながら読んでほしい『おおきな きがほしい』を紹介します。

 「おおきなおおきな木があるといいな。
 ねえ、おかあさん。」

 
お母さんにどうして? と聞かれ、高い高い木に登ってみたいと答えるかおるの考えたステキな木はこんな木でした。

両手では抱えられないような太い木に、はしごをかけ、ずんずん登っていくと、枝が三つに分かれたところに建てたかおるの可愛い小屋。その中で、春夏秋冬いつでも過ごすかおる。キッチンもあり、ホットケーキだって焼いて食べるのです。

小屋の外にはまだはしごが続き、リスの家、そのさらに上にはカケスとヤマガラの家。見晴台もあります。遠くの山まで見えるその景色に「わーい。」と声をあげるかおる。かおると一緒に登った気分になって、思わず叫びたくなる瞬間です。すぐにでもひみつの森に遊びに行きたい! そんな気持ちにさせてくれます。

子どもたちの森での遊びは無限です。落ち葉、木の枝、木の実を集めてはままごとをしたり、木登り、かくれんぼ、みんなで集って森の景色を見ながらお歌を歌う時間。玩具ひとつなくとも、森の自然と友達がいれば、夢中になっていつまででも遊びます。たくさんのモノで溢れる時代に、子どもたちの空想と創造で一から創り出すこの環境は、とても貴重で大切だなと常々感じます。そして、何より子どもたちの創造力にいつも驚かされます。どんなことも遊びに変えてしまう子どもたちの力を発揮できるこの環境をいつまでも守りたいなと思います。

子どもたちの空想は、かおるにだって負けていません。いつでも子どもたちとの会話は、空想の世界で溢れています。〜だったらどうする?、〜だったら? 大人も一緒になってその空想の世界に思い切り浸ってみます。すると、どんどんお話は広がっていき、もしもなったらどうしよう! の楽しい世界に「えー! わぁー! どうするー!?」と、その時の子どもたちの喜びようと言ったらありません。

そして、最後に、かおるは考えた木を絵にしていきます。そして、お父さんに見せ、本当に大きな木になる木を植えようと二人でマテバシイの木を植えます。

私はこのお父さんのように、かおるの話を本気で聞いて、考え、一緒になって遊べる先生でいたいなといつも思います。これからも、子どもたちの空想と創造の世界を共に楽しめることがとても嬉しく、楽しみで仕方ありません。

文章/Risa先生