お山の絵本通信vol.195

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『どんなにきみがすきだか あててごらん』

サム・マクブラットニィ/文、アニタ・ジェラー厶/絵、小川仁央/訳、評論社1995年

  どんなにきみがすきだか あててごらん
  そんなことわからないよ

今回ご紹介する絵本は、ちいさなうさぎとおおきなうさぎがお互いの愛情の深さを比べ合う、心温まるお話です。手や足を大きく広げたり、飛び上がったり、身体を目一杯使って大好きの気持ちを表現するふたりのうさぎの様子が、優しいタッチで描かれています。最後は、これ以上ないのではないかと思うくらいの大きな深い愛情表現で、物語の余韻が感じられるお話です。

この絵本は私が物心ついた頃には家にあり、何度も読んでいました。その頃は、この絵本のように、親や友達に「すき」という気持ちを伝えることには照れの気持ちがあり、何故か少し、隠したいというような気持ちがあったように思います。そんな自分と正反対に、相手に「きみのことがこんなにすきだよ」と思い切り伝えあっているふたりのうさぎ。改めて今読み返すと、当時、この絵本を読みながら安心する気持ちや温かさだけでなく、相手に伝えることが出来る素敵さも感じていたんだなと思います。

幼稚園で毎日を過ごしている今、子ども達から、まわりの人を想う気持ちの温かさに度々気付かされています。そしてそれは、相手と一緒にいる時だけではなく、その相手と離れている時にこそ表れることもあるんだなとも感じるようになりました。

毎朝の、クラス皆で集うお始まりの時間。1日の中で、全員で顔を合わせる最初の時間です。その時に姿が見えないお友達がいると、お休みかな? 遅れて来るかな? と子ども達の間で様々な推測が飛び交います。「ご用事かな」「お腹が痛いから、治ったら遅れて来るんじゃないかな」「病院に行ってるのかも!」「遅くに起きて、今、朝ごはんを食べているんじゃない?」他にも、細かい状況をあれやこれやと考える子ども達の頭の中には、そのお友達の色々な姿があるんだろうなと思います。

また、クラスでは夏休み明けから蝶の幼虫を数匹飼っており、子ども達は羽化するのを毎日心待ちにしていました。ある日、登園すると、とうとうその一匹目が羽化し、綺麗な蝶になっていました。お部屋に入るや否やすぐにその変化に気付き、鞄を背負ったまま「ちょうちょになってる!!」と大興奮だった子ども達。しばらく観察したあと、「お外に返してあげよう」と子ども達に伝えると「えー! 明日返したい!」とのこと。理由を聞くと、「その日お休みだったお友達に見せてあげたいから。」ということでした。ですが、蝶は広いお外で飛びたいだろうし、蜜も吸いたいはず。結果、写真に残して見せてあげるということになりました。

そして、子ども達の心の中にいつもある、おうちの人へのプレゼント。皆で製作として作ったり、自由あそびの時間に楽しげに作っている姿も見られます。「お土産」と言っている子どももおり、素敵な響きだなあと感じることもあります。そして、「びっくりするかな。泣くくらい喜ぶかな?」「お母さんこの色好きだから!」とお話をしながら、家に帰ってプレゼントを渡した時の情景を思い浮かべている子ども達はとても嬉しそうで、私までワクワクし、お家の人の反応が気になってしまいます。

いつも近くにいるからこそ自然に芽生える、その人を想う気持ち。この絵本は、そんな大切な気持ちを改めて感じさせてくれるようです。この絵本がくれる、温かさが胸に広がる優しい時間を、ぜひお子様と一緒に楽しんでみてください。

文章/Kaoru先生