お山の絵本通信vol.187

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『クリスマスに ほしいもの』

星野はしる/文、入山さとし/絵、ひさかたチャイルド2001年

来月はいよいよクリスマス。この絵本の題名でもある『クリスマスにほしいものは?』と尋ねられると、皆さんはどのような返事をしますか?

このお話に出てくるきつねのコーンは、いつも一人ぼっち。そこで友達と一緒に遊べるぬいぐるみをサンタさんにお願いします。でも、「もしも、ぼくとおんなじおねがいをだれかがしてたらどうしよう…」と不安になり、クリスマスイブの夜に森中のみんなのお願いを見て回ります。どの動物たちも眠っているのに、最後の家だけはドアが開いていて、うさぎのピートと出会います。ピートのお願いは「ぼくにすてきなともだちをください」でした。二人は友達になり、一緒にサンタさんのために雪かきをしたり、プレゼントを作ったり…。二人の楽しい時間がたくさん描かれています。中でも、コーンがピートに「コーンはもうぼくのともだちだよね」と言われた時に、コーンのおなかがポッとあつくなったように、私の心も温かくなり、幼稚園で初めて出来た友達のことを思い出しました。自分から話し掛けることが苦手で「一緒に遊ぼう」の一言が言えず、なかなか勇気が出なかった幼少の頃。しかし、一人でいた私を見て「ままごとで遊ぼう!!」と誘ってくれ、手をつなぎ引っ張ってくれた友達がいました。どんなにうれしかったことか…。その時の高揚した気持ちは今でも覚えています。

また、今は「一緒に遊ぼう」、「ブロックで遊ぼう」、「ブランコ一緒に乗ろう」、「○○ちゃんとお友達になったよ」、「幼稚園のみんなお友達だね」といった笑顔の子どもたちに何度も何度も出逢い、友達のいる楽しさ、うれしさ、素晴らしさを改めて教えてもらっています。

そして、絵本のお話は続き、友達になったピートの靴下が破れていたことに気付いたコーン。サンタさんにお願いをするプレゼントをぬいぐるみから靴下に書き直しをするのでした。

お互いが友達を思う優しい気持ちが見られ、形はないけれども、素敵なプレゼントをサンタさんからもらうことができたのではと思います。子どもたちも毎日、大好きな家族のこと、友達のことを思って過ごしている様子がたくさん見られています。次に使う友達の為にと考え、自らおもちゃをきれいに片付けたり、トイレのスリッパをきれいに並べ直す姿。また、「○○ちゃんに折り紙の折り方教えてもらったし、手紙を書いてきたんだ」、「このお団子おいしいから、お母さんにも食べさせてあげたいな」とお話をしてくれる姿。鉄棒やボールあそびなどの運動あそびをすると、「頑張れ!」と友達を大きな声で応援する姿。引き続きその姿を大切にしていきたいと思っています。そして自分のことだけを考えるのではなく、みんなが優しい気持ちを持ち、その優しさが伝わっていくことができるような毎日を過ごしていきたいと思っています。

お話の最後は、読み手に任され、ほんわかとした気持ちの余韻を残して終わります。この気持ちを味わってもらい、もう一度「クリスマスに欲しいものはなんですか?」と問いかけたくなる一冊です。

文章/Tomomi先生