お山の絵本通信vol.183

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『きょうもうれしい』

えがしらみちこ/文・絵、理論社2019年

  きのうの「うれしい」なんだった?
  きょうの「うれしい」なんだろう
  あしたもきっと「うれしい」ね

たまたま手に取った絵本の帯に書かれていたこの文章を読んで、どんなうれしいことが描かれているのだろうとワクワクしながらページをめくった『きょうもうれしい』という絵本を、今回は紹介させていただきます。

主人公の男の子は、トントントンという朝ごはんを準備する音で目を覚まします。今日の朝ごはんは、なめこのお味噌汁だということに気付き、早速、今日の「うれしい」がスタートしました。その後も、雨が降っていて長靴を履けることが嬉しかったり、ハートの石を見つけたことが嬉しかったり、男の子は、いつもと違うことに嬉しさを感じていきます。そうして、幼稚園に着いてからも、幼稚園からの帰り道でも、沢山の「うれしい」を発見しながら一日を過ごしていきます。その中で、クラスのお友達がみんな揃っていたことや、お家のみんなが揃って夜ご飯を食べること、いつもの当たり前のことが「うれしい」ことにも気付いた男の子。新しい発見も、いつもと変わらない当たり前のことも、色々な「うれしい」を噛み締めながら、「あしたもきっとうれしい」と眠りにつくのでした。

私は、クラスのみんなが揃って嬉しいというシーンを読んで、子どもたちもみんな揃うと喜んでいるなと、クラスの子どもたちの顔が浮かびました。お休みのお友達がいた翌日、登園してすぐに、クラスのみんなが揃っていることに気付くと、「今日みんないるよ!」と満面の笑みで知らせてくれる子、それを聞いて「本当? やったー!」と喜ぶお友達。顔を見合わせて喜ぶ姿や、「待ってたで!」とお休みだったお友達に声を掛ける姿を見て、幼稚園での生活の中で、みんなにとって、お友達が大切な存在となっていることが感じられ、とても嬉しく思います。

子どもたちと過ごしていると、子どもたちの沢山の「うれしい」を聞くことが出来ます。「今日はタコさんウインナーが入ってるんだよ!」「今日は公園でお迎えなんだって!」「今日のお洋服新しく買ってもらったの!」「見て見て! アリの行列すごい!」「○○ちゃんと靴の色一緒だ!」等、何気ないことからちょっと特別なことまで。実際に「うれしい」と口にしていなくても、言葉にして伝えてくれることで、嬉しいことなのだと感じ、そんな素敵な気持ちを伝えてくれたことや、伝え合えるお友達がいることがとても良かったなと思います。

絵本の中で、男の子が「いつものあたりまえのことがうれしい」と言っています。この文を読んだ時、私ははっとさせられました。「うれしい」となると、ついついいつもと違うから「うれしい」と思いがちな部分があったなと思ったのです。しかし、何気ない毎日の中にも沢山の「うれしい」があって、そんな「うれしい」に気付けることはとても素敵なことなのではないかと思いました。きょうの「うれしい」は、昨日と同じ「うれしい」かもしれないし、新しい「うれしい」かもしれない。決してひとつではなくて、沢山の「うれしい」を、これからも子どもたちと見つけながら、そして、分かち合いながら過ごしていきたいと感じました。


 文章/Mika先生