お山の絵本通信vol.178

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『おおさむ こさむ』

こいでやすこ/文・絵、福音館書店2005年

春、夏、秋と季節が過ぎ、その季節ごとにたくさんの表情を見せてくれていたお山のようちえんの園庭にもいよいよ冬がやってきました。「さむーい!」と言っている子ども達にぜひ読んであげたい冬が楽しくなる絵本「おおさむ こさむ」のご紹介です。

    おおさむこさむ雪が降る。
    雪が降る日はゆきぼうずが出るぞえ。

雪の降る日、きつねのきっこといたちのちぃとにぃはおおおばあちゃんが作ってくれたマントが早く着たくて外へ出かけていきます。家を出る前におおおばあちゃんはこう言います。「ゆきぼうずに会っても決して寒いと言わないこと。寒いと言ったら最後。コチコチに凍らされてしまうからね。」そう言われて、ソリ遊びに出かけたきっこ達の前にかわいい雪だるま達が現れます。「ぼくたちをよんだ? 一緒にあそぶ?」雪だるま達はソリ遊びのできるいいところへ連れて行ってくれます。

雪の中のしーんとした空気、まっさらな雪の上をきゅっと音をたてて歩く感覚、ソリに乗って走り出す瞬間…絵本の中の雪の世界は子ども達の憧れが詰まっています。

一緒にソリ遊びをして暑くなったちぃとにぃは、マントやマフラー、帽子を雪だるま達に預けます。でもきっこだけは、お気に入りのマントを脱ぎたくなかったのでもじもじしています。そして雪だるま達は、かき氷をたくさん振る舞ってくれるのですが…あれれ? かわいい雪だるま達がかき氷を食べてどんどん大きくなっていきます。違和感を覚え始めるきっこと、全く気がつかないちぃとにぃ。なかなか「寒い。」と言わないきっこ達にとうとうゆきぼうずの正体を現します。

少しずつおかしいぞ? と思わせる展開と雲行きあやしくなっていく天気、ゆきぼうずの表情ときっこのドキドキが増していく様子。子ども達はちょっとこわくてドキドキするストーリーが大好きです。

数年前、私は雪国と呼ばれる、とあるお山の麓にある保育園で先生をしていました。朝は雪かきから始まり、いつも遊んでいる遊具も雪に埋もれ、真っ白になった園庭で雪だるまのようにコロコロに厚着した子ども達と一緒に外へ出ます。ソリすべり、雪合戦、雪だるま作り…冬がくれる雪の贈り物で子ども達は何度も何度も繰り返し夢中になって遊びます。そんな中、おおさむこさむごっこが始まります。「寒いと言え。寒いと言って凍ってしまえー! ふぅふぅふぅー!」凍らされたくない子ども達はキャーキャー言って逃げ回ります。

近年ではなかなか雪遊びの経験は貴重になってきましたが、絵本でいつでも真っ白な銀世界に飛び立てます。この冬は子ども達と雪の世界に思いを巡らせ、どんな冬の遊びを楽しもうかなと今からわくわくしています。

文章/Risa先生