お山の絵本通信vol.172

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『わたしのワンピース』

にしまきかやこ/文・絵、こぐま社1969年

空から真っ白な一枚の布が落ちてきました。うさぎはそれでワンピースを作ります。

「ラララン、ロロロン。わたしににあうかしら。」お花畑をお散歩すると、着ているワンピースが花模様になりました。その後も雨が降ると水玉模様、草原を歩くと草の実模様、虹を抜けると虹模様など。

場所や出てくるもの、周りの状況に合わせて、さまざまに模様を変える魔法のようなワンピース。とても鮮やかでそしてあたたかな色の絵がこの絵本の魅力の一つで、ワンピースが次々と変身する度に心がうきうきします。

実際に自分のお洋服がこんな風に変身するとしたらどんなに嬉しいでしょう。誰もが思わず自分もこんな模様が良いと思ったり、こうなりたいという気持ちが膨らむような絵本です。またそのような不思議なものに出会う機会は実際にはないのかもしれませんが、考える、想像することはそれだけでとても楽しいことです。

私はこの絵本を読みながら子ども達が描く絵、絵を描いている様子が浮かびました。

ある日の絵画の取り組みの時のことです。一人の男の子の手が止まり、硬い表情で考え込んでいる姿がありました。どうしたのと声を掛けても無言です。何を描こうかととても迷っているようでした。そんな時にふとその子が顔を上げた時、お部屋の窓の外に竹が伸びているのが見えました。その瞬間表情が一瞬にして変わりました。その様子を見た私は窓の方を指差し「あっちで描いてみる?」とお部屋の中央に座っていたその子に声を掛けてみました。するとすぐに頷き、弾むように窓の方へ向かっていきました。すると「タケノコも見えるんじゃない?」「すごいよ。いっぱいだよ!」とその子は話しながら次々と興味を広げてそれと共に描く絵をどんどんと進めていきました。お部屋の窓から見える景色がその子の気持ちを一気に変え、白色の画用紙が見る見るうちに鮮やかな色で一杯になったのです。

活動を終えた後もその子の思いは続いており、「ねえ。外でも描いてみよう。」と提案することがありました。そこで園庭に出て、絵を描きました。「皆見て! ここにタケノコが大きくなってる〜! 色が変わってる!」と嬉しそうに話し、その声を聞きつけた周りのお友達も「本当だ。いいな〜。私もやりたい。」と集まってきて、一緒に絵を描くことが出来ました。周りには木や、葉っぱもあり、そして何より青空の下でのびのびと楽しそうに描いている姿がとても印象的で私の心にも温かく残る出来事でした。

子ども達は目に見えるもの、周りにあるものを体と心で大いに感じ取ってさまざまな形で表します。自然を感じながら、お気に入りのものを見つけながら・・・。持っているイメージや思いを絵にしたり、言葉にしたりとさまざまに表現する姿はとても素晴らしいです。これからも溢れる気持ちを思いきり表現出来る場を大切にしていけたらと思っています。

またこの絵本を一緒に読んだ時、どんな想像をし、どう感じるのか・・・子ども達の姿を思い浮かべながら私はとてもわくわくしています。

文章/Asami先生