お山の絵本通信vol.170

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『読み聞かせの勧め』


小学校以上の勉強の基本は「文字を読んで理解すること」です。幼稚園時代に子どもが文字に興味を持てば、その姿勢を無理なく応援することは大切ですが、急ぐ必要はまったくありません。年長の子どもたちは俳句を作ることができます。字を覚えるよいチャンスですが、園では字を教えることは行っていません。集団で何かの方向付けをすると、よほど工夫しないと嫌になる子が出ます。理由はオーダーメイドでないためです。

オーダーメイドの教育は、家庭教育です。家で子どもが字に興味を持てば、遠慮なく応援すればよいと思います。ただし、さりげなく、根気よく。さじ加減は親が一番よくわかるはずです。ヒントは腹八分目。薄味でないと長続きしません。子どもがやる気を見せたからと言ってあまり真に受けず、興味が長続きすることを何より大事なことととらえてほしいです。といって、教えるときは、できるだけ丁寧に、心を込めて。料理もそうでしょうが、「丁寧な薄味の料理」というのはあり得ると思います。もちろん、食べきれるだけにする、という意味で「腹八分目」の分量にとどめて。

文字に興味を持つ入り口は、なんといっても絵本でしょう。親が楽しそうに絵本を声に出して読めば、子どもはその真似をしたがります。小さいうちはたどたどしい読み方ですが、気にせずそのままにしておくのがよいでしょう。最初から細かな読み方のチェックをすると、やがて音読そのものを嫌悪するようになります。読み聞かせを通じて親が音読の手本を示しているので、変な読み方が身につく心配はありません。

小学校に上がれば、いよいよ文字を使った学習が始まります。待望の時間となるのか、たくさんの課題が待ち受けるとひるむのか。その鍵は、幼稚園時代に家での「絵本タイム」を楽しく過ごせたかどうかにかかっていると思います。文字の世界へのあこがれと期待が家庭で大切に育まれていれば、学校の勉強は前向きにとらえられるでしょう。

文章/園長先生